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ロシアンブルーのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】

ロシアンブルーは、筋肉質ですらっとした体格にベルベットのようなブルーの体毛、エメラルドグリーンの目をした気品あふれる猫種で高い人気があります。本記事では、そんなロシアンブルーが、かかりやすい病気とその予防法について紹介していきます。

ロシアンブルーの病気に対する傾向

ロシアンブルーの気を付けたい病気、下部尿路疾患(FLUTD)

ロシアンブルーはあまり病気をしない猫種と言われていますが、それでもかかりやすい病気があります。それは「下部尿路疾患」と呼ばれる病気です。

「尿路」とは尿が産生されてから、排出されるまでの経路のことで、尿は腎臓、尿管、膀胱、尿道の順番で体外に排泄されます。「下部尿路」とは、この中で体の外に近い膀胱、および尿道を指します。

猫の下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease:FLUTD)とは、猫の下部尿路に起こるさまざまな病気とその症状(頻繁にトイレに行き、排尿姿勢をとる。血尿、排尿したくてもできない排尿困難など)をすべて含んだ用語です。膀胱炎や尿道炎、尿路に石ができてしまう尿路結石、尿路の細菌感染など膀胱や尿道に何らかの病変がひとつ、あるいは複数存在することによって引き起こされます。

ある研究によると、ロシアンブルーはほかの猫種と比較して、この内の尿路結石ができるリスクが、2.8倍も高かったと報告されています。それでは、このFLUTDという病気について、症状や予防、治療についてご紹介しましょう。

ロシアンブルーがかかりやすい病気の概要と症状

ロシアンブルーがかかりやすい病気の概要、症状

オスのロシアンブルーに多い閉塞性FLUTD

原因が特定できるFLUTDは全体の40%以下で、残り60%以上は原因が特定できない「特発性」膀胱炎が占めると言われています。特発性とは、原因不明の病気のことです。また、尿道が不完全、または完全に詰まってしまう状態は、FLUTDの約10~30%を占めると考えられています。

尿路結石などで尿道が詰まってしまうFLUTD(閉塞性FLUTD)のほとんどがオス猫に発生します。これは、ロシアンブルーについても例外ではなく、オス猫には陰茎があるため、メス猫に比較して尿道の幅が狭く、また、尿道の距離が長いためにこの病気が起こります。

FLUTDでは、頻繁にトイレに行く様子やトイレに座っている時間が長くなる、突然トイレでない場所で排尿する、排尿時に痛みのために鳴く、血尿、尿を漏らしてしまう(尿失禁)といったさまざまな下部尿路症状が見られます。

閉塞性FLUTDでは、これらの症状に加えて、排尿困難や痛みのためにロシアンブルーが体に触れるのを嫌がる、陰茎や外陰部をしきりに舐めるといった行動が見られることがあります。

完全に尿が詰まった状態で24時間以上経過すると、排尿異常のほかに尿が排出できないことで体の中に老廃物がたまり、食欲不振、嘔吐、沈うつといった症状が見られるようになります。さらに、病状が進むとショック(瀕死の状態になる急性の症候群)に陥ることがあります。

ロシアンブルーがかかりやすい病気の予防と治療

ロシアンブルーがかかりやすい病気の予防と治療

程度によって大きく異なるFLUTDの治療法

ロシアンブルーがかかりやすい病気の代表として挙げられるFLUTDの治療は、原因によって異なります。状態の悪いFLUTDの場合には、生命の危険が予測されるので、尿道の詰まりを解除するよりも先に全身状態の安定を優先すべきです。そのような場合には、直接膀胱に針を刺して尿を一時的に抜きながら、入院管理下で静脈内点滴をし、体を助ける支持療法を行います。

体調に問題がない閉塞性FLUTDでは、ロシアンブルーの尿道にカテーテルと呼ばれる細く柔らかい管を挿入して、詰まりの解除を試みます。このとき猫が暴れたり、痛みが強い場合には、鎮静や麻酔が必要となることがあります。

詰まりがうまく解除されたあとは、カテーテルを膀胱内まで進めて生理食塩液で数回洗浄します。また、詰まりを解除した後に、刺激で尿道に炎症が起き、腫れて狭くなってしまうことがあるため、カテーテルを入れたままにしておくこともあります。

ロシアンブルーが尿道のつまりを繰り返す場合は、この病気の治療のため最終的に手術が必要になる場合もあります。尿道が狭い場合には、手術方法として尿道を切り広げる「会陰尿道瘻造瘻術」や尿道から外につながる経路をお腹の表面に作り変える「尿路変更術」が行われることがあります。

猫の尿路結石は療法食で溶けて治る場合もあれば、切開手術することもあり

ロシアンブルーに限らず、猫には、ストルバイトとシュウ酸カルシウムの2種類の成分で構成される尿路結石が多いことが知られています。ストルバイト結石は、適切な療法食で溶けて治る可能性があります。しかし、シュウ酸カルシウム結石は、食餌や薬などの内科療法では溶かすことができません。

愛猫のロシアンブルーが、シュウ酸カルシウム結石の場合やストルバイト結石でも問題を生じている場合には、手術で直接膀胱を切開して摘出することが必要になる場合があります。また、尿路に細菌感染があれば、適切な抗菌薬の投与が必要となります。特発性膀胱炎は無治療でも数日後に良くなることが多々あります。しかし、この病気は再発率も高く、さまざまな治療法が検討されていますが、残念ながら確実な治療法はありません。

再発しやすいFLUTDの予防法とは

FLUTDは再発しやすい病気のため、治療とともに予防が重要です。FLUTDは不適切な食餌を与えられている場合に起こりやすくなります。そのため、ロシアンブルーに適切な食事管理を行いましょう。もし尿の問題を起こすようであれば、動物病院を受診し、適切な食餌の指導を受けることをお勧めします。また、肥満もFLUTDの悪化要因とされているので、こちらも適切な食餌管理が必要です。

ロシアンブルーを始めとする猫は元々砂漠の生き物で、あまり水分を摂りません。しかしながら、飲水量が少ないと尿量が少なくなり、結石の材料となる成分の濃度が高くなることで、結石ができやすくなります。猫が十分に水分を取ることができるように複数箇所水飲み場を設置する、水の飲み方を制限しないといった工夫をするといいでしょう。

さらに、排尿回数が少ないと膀胱内に尿が滞留し、結石ができやすくなります。猫は繊細な生き物で、トイレの環境が気に入らないだけで、排尿回数が減ることがあります。そのため、トイレを常に清潔にして、ロシアンブルーに快適な排尿をさせる(特に猫を多頭飼いしている場合は注意しましょう)、ストレスをできるだけ解消するような生活環境の改善などが推奨されます。

ロシアンブルーのかかりやすい病気のまとめ

病気の少ないロシアンブルーですが、ほかの猫種に比べると尿の問題を起こしやすい傾向にあります。下部尿路疾患(FLUTD)は適切な管理によって十分予防が可能です。また、手術が必要になったり、時には重篤な状態になることもある病気なので、もし、ロシアンブルーを飼育されている場合でもそうでなくても、皆さんの愛猫がこの病気にかからないように十分注意しましょう。

※本稿『ロシアンブルーのかかりやすい病気の予防と治療について』は、獣医師により執筆されています。

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