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ブリティッシュショートヘアのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2019年07月22日
- ペットの健康
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ブリティッシュショートヘアはがっちりした体格が特徴的な品種で、食欲旺盛なために食べ過ぎて肥満になりがちです。
肥満は糖尿病のリスクを上げてしまうため、ブリティッシュショートヘアは糖尿病になりやすいと言えるかもしれません。
また、下部尿路疾患や肥大型心筋症といった病気は品種に限らず猫に多い病気のため、ブリティッシュショートヘアもこれらの病気に対する注意が必要です。
ブリティッシュショートヘアのかかりやすい病気の概要と症状
糖尿病
「糖尿病」の原因はいくつかありますが、ブリティッシュショートヘアに限らず猫の糖尿病の多くは慢性膵炎という病気の影響が原因です。
ほかには、人間の2型糖尿病のように、肥満やアミロイドという物質が膵臓に沈着するアミロイドーシスという病気が原因になるケースもあります。また、喘息やアレルギー性皮膚炎といったアレルギー疾患をもっていて、治療のためにステロイドを使用している影響で糖尿病を発症することもあります。
糖尿病は中~高齢で発症することが多く、性別差としては去勢したオスに多いとされていますが、これは肥満に関連しているものと考えられます。ブリティッシュショートヘアは比較的太りやすい品種のため、糖尿病リスクが高いと考えられます。
糖尿病の症状は、水を飲む量が増えておしっこの量も増える多飲多尿、食欲が旺盛なのに痩せていく、といったものです。進行すると、糖尿病の合併症として末梢神経の機能が低下してしまい、かかとを地面につけて歩くようになることがあります。
特に注意が必要なのが、糖尿病性ケトアシドーシスという状態です。急激に痩せてしまい、下痢や嘔吐をして衰弱します。昏睡状態になってしまうこともあり、非常に緊急性が高い状態です。
次に挙げる3つの症状が当てはまる場合、糖尿病と診断されます。
- 上記のような症状があること
- 持続的に血糖値が高いこと
- 尿糖が出ていること
下部尿路疾患(FLUTD:Feline Lower Urinary Tract Disease)
尿路とは、腎臓から尿道までの尿の通り道のことです。このうち腎臓から尿管を上部尿路、膀胱から尿道を下部尿路と呼びます。この下部尿路に影響する機能障害や疾患を総称して「下部尿路疾患」(FLUTD:Feline Lower Urinary Tract Disease)と呼び、尿道感染症、または腎臓結石などの原因が該当しないケースでこの診断が下されます。
原因としては、膀胱内の結晶、または結石、膀胱炎、尿道閉塞などがあります。猫は下部尿路疾患の発生率が非常に高く、ブリティッシュショートヘアも例外ではありません。
おしっこが出にくい、排尿時に痛みがある、血尿、陰部をしきりに舐める、トイレ以外で排尿するといった症状が見られます
肥大型心筋症
猫の心臓病の中で最も多いのが、肥大型心筋症です。心臓の筋肉が内側に向かって分厚くなることで心臓の内腔が狭くなり、ポンプ機能が弱くなってしまい血液を全身に送りにくくなります。
初期は無症状のため気付くことはありませんが、進行してくると元気や食欲がなくなってきたり、肺水腫を起こして呼吸困難になり、口を開けて呼吸したりすることがあります(通常、猫は鼻呼吸で、口を開けて呼吸することはほとんどありません)。また、血栓ができてしまうことがあり、後ろ足に詰まると麻痺が出ます。
ブリティッシュショートヘアのかかりやすい病気の予防と治療
糖尿病の予防と治療
糖尿病の予防としてはリスクを下げるということになり、体重管理が最も重要です。
糖尿病の治療の目標は、症状を改善させることと合併症を予防することです。猫では血糖値が約300mg/dL未満になれば尿糖が出なくなり、糖尿病の症状もなくなります。
治療法には、基礎疾患や併発疾患の管理、食事療法、インスリン療法などがあります。猫の場合、基礎疾患や併発疾患をしっかり治療することで血糖値が下がり、糖尿病の治療が必要なくなることもあります。
食事療法はキャットフードのうち糖尿病治療食を選ぶといいでしょう。これは高タンパク・低炭水化物食という組成で、糖尿病が軽度だと食事管理だけで症状が落ち着くことがあります。食べ方も大事で、一気に大量に食べると食後の高血糖が悪化するため、少しずつ食べさせます。
インスリン療法はインスリン注射によって血糖値をコントロールするものです。毎日注射する必要があり、多くの場合は1日2回の注射が必要なので、お家で飼い主さんがインスリン製剤を注射することになります。
下部尿路疾患の予防と治療
下部尿路疾患の予防は治療にもつながりますが、水分をしっかり摂取して排尿を促すこと、そして、ストレスがなるべくかからないような生活をさせることです。
下部尿路疾患の中には、治療しなくても自然に改善するものもありますが、再発率が高いためしっかりとしたケアが必要です。細菌性の膀胱炎であれば抗生物質を投与したり、結石があった場合は外科手術で結石摘出を行います。また、結晶があった場合、成分が溶けるものであれば溶解作用のある療法食を与えます。
肥大型心筋症の予防と治療
肥大型心筋症の原因はわかっていないため、予防法はありません。
獣医師が聴診をしたときに心雑音が聴取されることで発見される心臓病もありますが、肥大型心筋症は心雑音が出ないことも多くなかなか発見されないケースもあります。また、心臓の内腔に向かって肥大が進むため、全体的な形を調べるレントゲン検査でも発見できないことが少なくありません。確実なのは心臓超音波検査です。
治療は根治療法ではなく対症療法になります。肺に水が溜まったら利尿剤を使う、循環不全の対策として血管拡張薬や強心薬を使うなどです。また、血栓塞栓を起こさないような薬を使うこともあります。
ブリティッシュショートヘアのかかりやすい病気のまとめ
ブリティッシュショートヘアは遺伝性の病気が少ないのですが、猫がかかりやすい病気全般に対しての注意が必要です。
上記で取り上げた病気は、知識がないと初期での発見が難しく進行してしまうと猫自身の生活の質が低下してしまいます。正しい知識で猫の健康を管理してあげましょう。
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