トイプードルのかかりやすい病気とけが、その予防、治療方法【獣医師が執筆】

トイプードルのかかりやすい病気とけが、その予防、治療方法【獣医師が執筆】

トイプードルは、ジャパンケネルクラブで最多73,046頭(2018年1月~12月の期間)もの登録数を数え、堂々1位の人気犬種です。そんな日本で最も人気の高いトイプードルですが、どのような病気になりやすいのでしょうか? 本稿ではトイプードルのかかりやすい病気やけがについてご紹介したいと思います。

トイプードルの病気に対する傾向

トイプードルは、小型犬の代表的な犬種であり、小型犬によく見られる病気は、ほぼ例外なくトイプードルについても起こります。

気管虚脱や僧帽弁閉鎖不全症といった呼吸器や心臓の病気、膝のお皿が外れてしまう膝蓋骨脱臼や股関節の大腿骨頭と呼ばれる部分の強度が低下してしまうレッグ・カルベ・ペルテス病といった病気がその代表です。

そして、何と言っても肘から手首にかけての前腕部と呼ばれる部分の骨である橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という2本の骨の骨折が非常によく見られます。本稿では、橈尺骨骨折について詳しく紹介します。

トイプードルに見られるけがの概要、症状

トイプードルに見られるけが「橈尺骨(とうしゃくこつ)骨折」

犬の橈尺骨(とうしゃくこつ)骨折は、全骨折中のおよそ18%を占め、3番目に多い骨折です。しかし、これは交通事故などの高エネルギー外傷を原因とする骨折を含めた発生率であり、トイプードルを始めとするトイ犬種における橈尺骨骨折の発生率はさらに高くなります。また、その原因は交通事故などの高エネルギー外傷ではなく、低所からの飛び降りや落下が大部分を占めます。

犬の橈骨尺骨は前方に湾曲した弓形をしています。橈尺骨が湾曲しているふたつの大きな理由は、前腕部の回旋運動と手根関節における屈筋群の有効利用にあります。また、歩行時に犬の前両足には体重のおよそ60%が分散され、その割合は後ろ足よりも大きくなります。

また、人間では荷重の90%が橈骨へ分散し、残りの10%が尺骨へ分散されることが報告されています。犬では前足に生じた荷重の何%が尺骨へ分散されるかについての報告はありませんが、尺骨の形状から推測して荷重の多くは橈骨へ分散されると考えられています。体重3kgの犬では、94cmの高さから飛び降りた際には、片側前肢の橈骨にはおよそ12、3kgの荷重が瞬間的に生じることになると推測されます。このように橈尺骨は比較的細い骨であるにもかかわらず、強い荷重がかかることが考えられるのです。

また、ある報告では、トイプードルを始めとするトイ犬種の橈骨はほかの犬種よりも骨密度が高く、たわみにくいことが明らかになっており、荷重に対して粘らず、亀裂が入りやすいのではないかと考察されています。

トイプードルの病気やけがの予防、治療

トイプードルの病気やけがの予防、治療

トイプードルの橈骨尺骨の主な原因は、先に述べたとおり、低所からの飛び降りや落下が大部分を占めています。そのため、予防法としては、安易にソファやベッドの上から飛び降りさせない、抱き上げたときに落とさないように細心の注意を払うことです。

愛犬のトイプードルが骨折してしまった、あるいは骨折が疑われる場合には、とにかくきちんと動物病院を受診しましょう。歩き方や立ち方を見ることでどの部位に骨折があるかを判断することができます。

骨折が疑われる場合、動物病院では必ずレントゲン検査を行います。その理由は、骨折を正しい位置に整復するのに必要な情報を得るためです。また、同時に反対側の正常な足もレントゲンを撮ります。それは、犬の骨は個体差が大きく、その足だけを見ても本当に骨折しているのか、あるいは骨折していたとしてもどのような形に直せばいいのか、目標が必要になるためです。

なお、骨に限らず、レントゲンは影絵で重なっている部分の評価が困難であるため、正面と横からレントゲンを撮影します。場合によっては痛みのために正しいレントゲンが撮影できない場合があるため、麻酔や鎮静が必要になることがあります。

トイプードルの橈骨尺骨骨折の治療法
骨折の治療方法としては、ギブスや添え木などを用いた外固定、ねじや金属製の板を用いたプレートスクリュー固定、体の外に金属製の支柱を立てて、支柱と針金とを固定することで骨折した骨片同士を固定する創外固定といった方法を選択することができます。

中型、大型犬ではどのような治療法を選択したとしても多くは良好な治癒過程をたどりますが、トイプードルを始めとしたトイ犬種では、外固定で治療した場合、もともとの形と異なる形で骨がくっ付いてしまう変形癒合や骨がくっ付かない骨癒合不全といった合併症の発生率が75%にも上ることが知られています。そのため、プレートスクリュー固定や創外固定などによって、確実な整復を行う必要があるのです。

しかし、トイプードルのような小型犬種では、プレートスクリュー固定を行っても合併症の発生率は1割程度にも上ると言われており、通常の骨折治療に比べて2から3倍高い割合で発生し、治療の難しい骨折として知られています。

これに対応して、最近はトイ犬種の橈尺骨骨折を対象として、さまざまな材質やサイズのインプラント(主に金属製のプレートやネジ)が開発され、それらを用いた治療法が提唱されるようになってきています。

トイプードルがなりやすいけが、骨折のまとめ

トイプードルは、その小ささゆえ足の骨が細く、骨折のリスクが高い犬種です。骨折は、強い衝撃が加わる交通事故だけに限りません。むしろ、トイプードルのようなトイ犬種は、ソファの上から飛び降りたくらいでも、その体高と骨の細さや構造から容易に骨折してしまう恐れがあります。

また、トイプードルがなりやすい橈尺骨骨折は、合併症の発症率が高く、ほかの骨折と比較して治療しづらい骨折です。これくらい大丈夫と思わずに、飛び降りや落下の恐れのあるものをできるだけ排除し、愛犬が骨折しないように努めてください。

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