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ベンガルのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2019年07月18日
- ペットの健康
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ベンガルのかかりやすい病気の傾向
ベンガルは、基本的に感染症への抵抗が高い猫種ですが、いくつかかかりやすい遺伝性疾患があります。また、性格上、けがや誤飲はほかの猫種と比較してかなり多いと言えます。
ベンガルのかかりやすい病気の概要と症状
ピルビン酸キナーゼ欠損症
「ピルビン酸キナーゼ欠損症」は、赤血球に存在するピルビン酸キナーゼという酵素が先天的に欠損することで、十分なエネルギーの産生ができなくなり、赤血球の寿命が短くなる疾患です。
血管内で赤血球が壊れていくので、症状として慢性的な貧血、耳や歯茎と言った可視粘膜の蒼白、すぐに疲れる、呼吸が速いといったものが見られます。
進行性網膜萎縮
「進行性網膜萎縮」とは、目の奥にある網膜が徐々に変性、萎縮してしまい、光や色に対する感受性が低下する疾患です。網膜が萎縮してしまうと、眼底部から水晶体への栄養、および酸素供給が減少し、白内障を起こしやすくなります。
猫では非常に稀な疾患ですが、ベンガルやアビシニアンでは遺伝性の進行性網膜萎縮が起こるとの報告があります。
症状は、まずは夜間に見えづらい(夜盲)が現れます。進行してくると、日中でも目が見えなくなり、夜間と同様の視力の低下が起こります。
肥大型心筋症
「肥大型心筋症」は、心臓の心筋が厚くなることで心臓の内腔が狭くなる疾患です。内腔が狭くなると、送り出す血液の量が少なくなるので、循環障害が起こります。また、心臓内部で血液の乱流が起こり、血の塊である血栓が形成されやすくなります。
症状は、疲れやすくなる(運動不耐)、呼吸促拍、元気や食欲の低下が見られます。血栓が大腿動脈の分岐部に詰まると、動脈血栓塞栓症が起こります。突然の後肢麻痺、後ろ足の痛みや冷感が見られます。
骨折
活発な性格のベンガルは、高い所から落下するといった外傷による骨折が多く見られます。骨折しやすい骨は、前肢の橈尺骨(とうしゃくこつ)と中手骨、後ろ足の大腿骨、脛骨(けいこつ)、中足骨です。
症状は骨折部位の痛み、腫れ、熱感が見られます。また、四肢の骨折の場合は歩き方に異常が現れます。
異物誤飲
好奇心の強い性格でもあるベンガルは、さまざまなものを口に入れます。小さくて柔らかいものであれば、便と共に排泄されることが多いのですが、ある程度の大きさがあり、尖っているものの場合は、腸管閉塞を起こしたり、消化管粘膜を傷つけたりする恐れがあり危険です。
症状は、食欲不振や嘔吐といった消化器症状がメインです。誤飲したものによっては、吐物に血が混じったり、下痢、黒色便、腹痛が見られる場合もあります。
ベンガルのかかりやすい病気の予防と治療
ピルビン酸キナーゼ欠損症の予防と治療
ピルビン酸キナーゼ欠損症は、遺伝性疾患なので予防法は確立されていません。しかし、環境やストレスが発症の要因となっている可能性が報告されています。運動不足を解消してストレスを軽減することが予防につながるかもしれません。
また、貧血が軽度の場合は、運動の制限や、場合によっては輸血を行います。貧血が重度の場合は、異常な赤血球を処理する臓器である脾臓を摘出し、赤血球の減少を抑えることもあります。しかし、命に関わる重篤な貧血に陥ることは多くありません。
進行性網膜萎縮の予防と治療
進行性網膜萎縮の予防法や治療は確立されていません。しかし、命にかかわる疾患ではなく、徐々に進行する病気であるため、愛猫のベンガルがかかったとしても、家具の位置を覚えている室内などでは元気に過ごす子は多いと言えます。視力低下の兆候が確認したら、生活環境をできるだけ変えずに生活してあげましょう。
肥大型心筋症の予防と治療
遺伝性の肥大型心筋症には予防法がありません。呼吸が速いといった心不全の徴候が見られたら、心臓の検査をお勧めします。栄養性の肥大型心筋症の場合は、タウリンの補給によって予防が可能です。
治療法としては、心臓の負担を減らすために血管拡張薬を投与します。また、血栓形成を予防する目的で、血液抗凝固薬の投与も行います。動脈血栓塞栓症が起こっている場合は、できるだけ早く血栓溶解薬によって詰まった血栓を溶かします。
骨折の予防と治療
骨折の予防として、屋内の障害物には十分注意しましょう。家具の隙間にはまり込んでしまう、棚に詰まれている物のせいでジャンプに失敗する、落下物の下敷きになるなど、考えられることは無数にあります。整理整頓を心がけましょう。
治療は、外科手術によって内固定(ないこてい)します。内固定とは、体内に金属製のピンやプレートを当てて、骨折面の整復を行います。その後は骨の癒合が起こるまで絶対安静です。
異物誤飲の予防と治療
異物誤飲の予防は骨折と同様に整理整頓です。猫の異物誤飲で多いものは、おもちゃとビニール袋です。留守にする際は、これらがベンガルの手に届かないように十分気を付けてください。
治療法としては、異物が腸管に閉塞するリスクが小さい場合、経過を観察して便中に異物が出てくるのを待ちます。異物が消化管の通過障害を起こす可能性が高い、あるいは尖っていて消化管穿孔のリスクがある場合は、胃切開、もしくは腸切開によって異物を摘出します。
ベンガルのかかりやすい病気のまとめ
ベンガルは身軽で運動が大好きなので、けがや事故の予防はいくらやってもし過ぎではありません。予防できる疾患については徹底的に予防し、予防できない遺伝性疾患については、日常的なケアの中での早期発見を目指しましょう。
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