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ミニチュアダックスのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2019年07月08日
- ペットの健康
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中世に作出されたダックスフントは、原産国のドイツで3つのサイズに分けられています。
ミニチュアダックスもほかのダックスフント同様、猟犬であり、嗅覚を使ってアナグマやウサギなどの獲物を探索し追い詰めるハウンドドッグです。
ミニチュアダックスは日本でも人気の犬種ですが、遺伝病を始めとするかかりやすい病気がいくつかあります。今回はミニチュアダックスで注意したい病気の症状や治療、予防方法について解説します。
ミニチュアダックスのかかりやすい病気の傾向
胴長体型のミニチュアダックスでは、椎間板疾患がほかの犬種と比較して圧倒的に多くなっています。また、目や皮膚の病気が発生しやすいのも特徴です。
ミニチュアダックスのかかりやすい病気の概要と症状
椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニア」は、背骨同士をつなぐ軟骨である椎間板が飛び出し、背骨の中を通っている脊髄を圧迫することで神経症状が現れます。背骨は、首から尻尾まで体の真ん中を通っていますが、ミニチュアダックスの椎間板ヘルニアの多くは腰部で発症します。
軽度であれば背中の痛みが現れますが、重度となると下半身の麻痺や排尿障害が見られます。
進行性網膜萎縮
「進行性網膜萎縮」は、光や色を感知する網膜が徐々に萎縮してしまう疾患です。ミニチュアダックスの場合、遺伝的に進行性網膜萎縮が起こりやすいと言われています。
初期症状としては暗い場所で見えにくくなります。「進行性」と名の付くとおり、徐々に失明していきます。1歳未満での発症もあれば、中高齢で認められる場合もあります。
白内障
「白内障」は、目のレンズに当たる水晶体が白く濁ることで、視力の低下を招きます。
犬における視力の評価は難しく、いつもより物にぶつかりやすくなる、散歩中に側溝にはまりやすくなるなどの症状が出たら要注意です。
外耳炎
垂れ耳であるミニチュアダックスでは、耳の通気性が悪くなると、マラセチアという酵母などが繁殖して炎症が起こります。「外耳炎」になると、耳の痒みが引き起こされますので、本人にとって非常にストレスになります。
無菌性結節性脂肪織炎
「無菌性結節性脂肪織炎」は、腰や足の付け根などの皮膚にしこりができる疾患で、そのしこりが膨らんで破裂することがあります。
皮膚症状としてはしこりが現れ、患部の疼痛(うずくように痛むこと)、熱感(熱っぽい感じ)を伴います。全身症状としては、発熱(40℃以上)、元気がなくなり、食欲の低下が見られます。
尿石症(シスチン尿石症)
「尿石症(シスチン尿石症)」は、腎臓、尿管、膀胱、尿道の尿路系に結石ができてしまう疾患です。ミニチュアダックスでは、特にシスチンという成分の結石ができやすいと言われています。
シスチンは、タンパク質を構成するアミノ酸の一種で、表皮の角質層、爪などを構成する成分であるケラチンに含まれます。通常、シスチンは腎臓でろ過された後に体内に再吸収されます。しかし、遺伝的な代謝の異常などにより再吸収がうまくいかないと、尿中のシスチン濃度が高くなり、これが結石化することでシスチン尿石症となります。
結石の形成される部位によって症状はさまざまですが、血尿、頻尿、排尿障害といったものがよく見られます。
ミニチュアダックスのかかりやすい病気の予防と治療方法
椎間板ヘルニアの予防と治療方法
軽度の場合は消炎鎮痛薬で疼痛の管理を行います。根本的な治療は外科手術となり、後ろ足の麻痺や排尿障害が現れる前に行うことが望ましいです。術後はリハビリによって麻痺した足の機能を改善させます。
予防法としては、腰に負担をかけないようにすることです。小さな段差にも気を配る、床を滑りにくくすると効果的です。また、体を地面と垂直にする姿勢が最も腰に負担をかけるので、後ろ足だけで立たせないことや、抱っこの際にお尻を下にして抱かないことも重要です。
進行性網膜萎縮の予防と治療方法
残念ながら、遺伝性に発生するため有効な治療法や予防法はありません。
しかしビタミンEやアスタキサンチンなどの抗酸化物質を含むサプリメントが網膜の変性を遅らせると言われています。この病気では白内障を引き起こしやすいことがわかっているため、定期的なチェックにより白内障の進行や緑内障にも注意が必要です。
白内障の予防と治療方法
遺伝的な要因以外にも、代謝性の要因(糖尿病など)によっても白内障のリスクは高まります。これらの要因を抑えることが予防となります。
根本的には手術で白濁した水晶体を除去し、眼内にレンズを挿入します。初期の白内障の場合は、進行を遅らせる点眼薬を用いることもあります。
外耳炎の予防と治療方法
耳の環境を清潔に保つことが予防になるので、定期的に耳掃除をしてあげましょう。
治療は、耳の洗浄と抗炎症薬の点耳によって行います。
無菌性結節性脂肪織炎の予防と治療方法
はっきりとした原因がわかっていない病気なので、予防することは困難です。膵臓疾患や肝臓疾患、多発性関節炎や関節リウマチなど、ほかの疾患が複数関与している場合もあるので、それらの疾患の予防を行うことで無菌性結節性脂肪織炎の予防につがるかもしれません。
治療は、ステロイドや免疫抑制剤を用いて炎症を抑制します。
尿石症(シスチン尿石症)の予防と治療方法
予防に関しては、結石のできにくい食事に変更したり、いつでも水分補給ができる環境を用意して尿の量を増やしたりするのも効果的です。
シスチンはアルカリ性尿で溶けやすいと言われています。そのため、食事の変更によって尿のpHをコントロールすることによって治療を行います。しかし、食事療法での治療が困難な場合は、手術によって結石を摘出します。
ミニチュアダックスのかかりやすい病気のまとめ
ミニチュアダックスは、人間が利用するために作出した犬種ですので遺伝疾患が多い犬種です。しっかりした健康管理で、病気にならないようにしたいですね。また、日ごろから愛情をもって何か変わったことがないかチェックしてあげましょう。
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