ソマリのかかりやすい病気の傾向
ソマリは、元々アビシニアンの中で長毛で産まれた個体を元に作り上げた品種です。そのため、遺伝的にアビシニアンに起こりやすい病気は、ソマリにも起こりやすい病気ということになります。
そういった病気には、進行性網膜萎縮症、アミロイドーシス、ピルビン酸キナーゼ欠損症、後天性重症筋無力症などがあります。今回はこれらの病気について解説します。
ソマリのかかりやすい病気の概要、症状
進行性網膜萎縮症
進行性網膜萎縮症は、遺伝性網膜変性症や遺伝性網膜症とも呼ばれる病気です。犬では、ほとんどが遺伝的な要因で発症する病気であるのに対し、猫では多くの場合は後天性です。しかし、ソマリは、アビシニアンと同様に先天的に発症することがあります。
網膜は眼球の内側を覆っている部分ですが、進行性網膜萎縮症は、この網膜が変性を起こして薄くなってしまう病気で、その結果として視力障害が起こります。視力障害の程度は網膜の萎縮の程度によって変わり、暗いところで見えにくくなる夜盲症のようなケースから、失明してしまうケースまであります。
アミロイドーシス
アミロイドは、タンパク質のひとつでナイロンのように細長い形をしています。アミロイドには、いくつかの種類があり、その中の「血清アミロイドAタンパク(SAA)」というタンパクが身体中のさまざまな臓器に沈着してしまう病気がアミロイドーシスです。
元々、SAA自体は体内で炎症が起こったときに肝臓で合成されるものであり、有害なものではありませんが、産生過剰だったり、遺伝的にアミロイドが沈着しやすい体質だったりするとアミロイドーシスを発症してしまいます。
アミロイドが沈着した臓器は機能障害を起こし、主に肝臓と腎臓に沈着したときに症状が出ます。症状としては、元気や食欲がなくなる、多飲多尿、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、肝不全、タンパク尿、血栓塞栓症などです。一般的な好発年齢は7歳ごろですが、ソマリでは1歳未満で発症することもあります。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
さまざまな品種で発生が報告されている遺伝性の病気で、ピルビン酸キナーゼという赤血球細胞の代謝で重要な役割を果たしている酵素が欠損することで、赤血球が破壊されてしまい貧血が起こります。遺伝子検査では、ピルビン酸キナーゼ遺伝子に変異があるかどうかを調べます。
ピルビン酸キナーゼ欠損症を発症すると、貧血に伴う症状が見られ、疲れやすい、運動をしたがらない、粘膜が蒼白になる、脈が速いなどがあります。発症原因は、生活環境やストレスが関与していると考えられており、その違いによって症状の程度や発症年齢には大きな個体差があります。
後天性重症筋無力症
体を動かそうとするとき、末梢神経から筋肉へアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。筋肉にはアセチルコリンを受け取る受容体があるのですが、自己抗体ができてしまい、その受容体を攻撃してしまうようになるのが重症筋無力症です。
自己抗体は特発性の自己免疫疾患で作られるようになることもあれば、胸腺腫など一部の腫瘍が原因で作られることもあります。重症筋無力症は、筋肉をきちんと動かせなくなる病気なので、症状としては筋力が低下する、食べるスピードが遅くなる、まぶたが落ちたような顔つきになる、歩き方がフラフラする、などの症状がみられます。
また、食道の筋肉が虚脱してしまい、巨大食道症を発症することもあります。巨大食道症になると食べ物を正常に胃に送り込めなくなるため、食道内に食べ物が残留してそれを吐き出したり、その時に誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。
ソマリのかかりやすい病気の予防、治療
進行性網膜萎縮症の予防と治療
後天的な発症では、タウリンというアミノ酸の不足が原因になっていることがわかっています。そのため、予防としてはタウリンを摂取することになります。
拡張型心筋症との関連が解明されてから、キャットフードにタウリンを配合されるようになったため、キャットフードを食べている猫では発生はほとんどありません。しかしながら、ソマリの場合は先天的に発症する可能性があります。その場合は残念ながら予防方法がありません。
また、網膜は一度変性してしまうと元に戻すことはできないため、治療法もありません。
アミロイドーシスの予防と治療
アミロイドーシスは、予防法も治療法も確立されていません。発症してしまったら、それぞれの症状に対して対症療法を行います。具体的には、肝臓や腎臓の機能障害が起きることが多いため、これらの臓器の保護が目的になります。
ピルビン酸キナーゼ欠損症の予防と治療
ピルビン酸キナーゼ欠損症も遺伝性であり、確実な予防法はなく完治させることも難しい病気です。
症状が軽度であれば、静かな生活を送るなどの対応で十分に良好なQOL(quality of life:生活の質)を維持できることもあります。重度であっても安静は重要です。さらに、貧血が重度であれば輸血や骨髄移植を考慮しますが、手間やコスト、リスクの点でなかなか実施は難しいケースが多いようです。ストレスの軽減もある程度の効果が期待されます。
後天性重症筋無力症の予防と治療
後天性重症筋無力症の予防法はありません。
治療としては、アセチルコリン分解酵素を抑える作用のあるコリンエステラーゼ阻害薬を投与して、神経と筋肉の伝達を促す方法、ステロイドのような免疫抑制剤で自己抗体の働きを抑える方法があります。
胸腺腫などの腫瘍が原因で重症筋無力症が発症している場合は、腫瘍の治療を行います。
ソマリのかかりやすい病気の予防と治療のまとめ
ソマリはアビシニアンを起源としているため、アビシニアンと同様に、いくつかの遺伝的な病気を発症してしまうリスクがあります。
遺伝病は、その遺伝子を持っていると確実に予防することは難しく、発症してしまうと完治できないものが多いのです。病気の中には、遺伝子検査を行うことでリスクを避けることができるものもあります。そのため、そういった病気が心配な方は、ソマリを飼う前に獣医さんに相談してはいかがでしょうか。
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