エキゾチックショートヘアと言えばユーモラスな表情が魅力ですが、この表情を作り出しているパーツのひとつが低い鼻です。潰れたように上を向いていて、目と目の間には、くぼみがあります。
このような低い鼻は、「鼻べちゃ」と表現されることがありますが、正式には「短頭種」と呼ばれています。短頭種の猫は普通の猫よりもマズル(ヒゲの付け根)が短く、前頭骨から後頭骨までの距離が短いという特徴があります。
エキゾチックショートヘアの鼻が潰れている理由
人為的に作り出された低い鼻
短頭種の猫は独特の愛くるしさがあることから世界中で人気があり、エキゾチックショートヘアは世界的に有名な猫登録団体であるCFAが選出する「人気猫種ランキング2016」で1位を獲得しています。
実は、この低い鼻は人為的に作り出されました。エキゾチックショートヘアは外見がペルシャに似ていますが、ペルシャも低く潰れた鼻がトレードマークです。
ブリーダーたちは「短い毛を持つペルシャ」を作りたいと思い、ペルシャとバーミーズやアメリカンショートヘアを掛け合わせました。交配が繰り返されることで、エキゾチックショートヘアの低く潰れた鼻が完成していき、ペルシャと遜色ない魅力を獲得しました。
愛猫家の要望から生まれたエキゾチックショートヘア
鼻が低いエキゾチックショートヘアはなぜ作られたのでしょうか。エキゾチックショートヘアの基になったペルシャは19世紀末に作り出されました。19世紀末はちょうど、キャットショーが始まった時期でもあります。
キャットショーに出演したペルシャは多くの愛猫家に注目され人気を博し、それに伴い短頭猫の人気も高まったのではないかと考えられています。ブリーダーは、人気が高いのであれば需要に答えようと、交配を行って新しい猫種を作り出します。つまり、「こんな猫が欲しい」という愛猫家の要望によって、鼻べちゃのエキゾチックショートヘアは生まれたのです。
なぜ鼻べちゃに魅力を感じるのか
なぜ、人は鼻べちゃ猫に魅力を感じるのでしょうか。それは、エキゾチックショートヘアの豊かな表情を見ればおわかりいただけるのではないでしょうか。
「ブサかわいい」とも表現されるユーモラスな表情は、人の心を捉えます。この表情は、低く潰れた鼻があってこそ生まれるものです。また、鼻が低い短頭種の猫は頭蓋骨が丸く、赤ちゃんに似ていることから、「守ってあげたい」という感情が生まれ、魅力を感じるのではないかという説もあります。
鼻べちゃはいいことばかりではない
ブサかわいさを演出する鼻べちゃは愛猫家にとって魅力的です。しかし、かわいさや愛嬌はあくまで人間の見方に過ぎず、当の猫にとっては良いことばかりではないという一面もあります。
独特な鼻べちゃには弊害も多く指摘されており、エキゾチックショートヘアはその特徴ゆえに不自由な生活を送ったり、病気のリスクを抱えたりしていることを理解しなければなりません。
鼻が潰れているエキゾチックショートヘアにはこんな配慮が必要
エキゾチックショートヘアは、鼻べちゃゆえに生活に不自由することがあります。
食べやすい食器を用意する
短頭種の猫は下あごが前に突き出し、上の犬歯が水平方向に向いているため、上手にフードを食べられないことがあります。より食べやすい食器を用意しましょう。
平らなお皿や浅い食器ではうまくフードをすくうことができず、外に押し出してしまいます。エキゾチックショートヘアには、適度な深さがあるすり鉢状の食器が適しています。片方のフチが高くなっていて、フードがこぼれにくい短頭種向けの食器もありますから試してみましょう。
フードをガツガツ食べても動いたりひっくり返ったりしない、重くて安定感があることも食器選びのポイントです。
エキゾチックショートヘアに食べやすいフードを用意する
鼻べちゃには度合いがあり、下あごの方向と犬歯の角度によって4段階に分かれています。エキゾチックショートヘアは、鼻の低さや潰れ具合に個体差があります。より鼻べちゃ度合いが高い猫は、フードをうまく咀嚼できないのでフード選びにも配慮が必要です。
ドライフードは粒が小さいものが適しています。粒が小さければ、大きいものよりも咀嚼の回数が少なくて済みます。しかし、ドライフードは硬いので、どうしても食べるのに時間がかかってしまいます。最近ではやわらかくて食べやすいセミドライフードが増えているので、そちらも試してみましょう。
やわらかなウェットフードであればかむ回数が少ないので、スムーズに食べることができます。ただし、ウェットフードばかり食べているとかむ力が弱ってしまうので、ドライフードと組み合わせて与えてください。
エキゾチックショートヘアの低い鼻が引き起こす病気
流涙症
エキゾチックショートヘアの低い鼻は病気の原因にもなります。特に多い症状が、涙が溢れる「流涙症(りょうるいしょう)」です。目の病気ですが、実は鼻の低さが関係しています。
鼻が低いと顔の骨格の関係で鼻涙管(びるいかん)が詰まりやすくなり、涙が目にあふれてしまいます。分泌された涙がスムーズに排出されないため、いつも涙目のように見えるのが特徴です。
「涙目になるだけだから放っておいても大丈夫だろう」と甘く考えてはいけません。命に関わることはありませんが、流涙症を放置すると目の湿いが原因で雑菌が繁殖しやすくなり、炎症を起こしたり、感染症になったりすることがあります。
そのほかの主な症状としては、目頭から鼻筋にかけて被毛が茶色く変わる「涙やけ」や、「目やにの増加」「湿疹」などがあります。流涙症は、ほかの目の病気の原因にもなるので、目の違和感を確認したら早めに動物病院を受診しましょう。
エキゾチックショートヘアの流涙症は、顔の骨格が関係しているため予防が困難です。治療法としては、鼻涙管の通りが悪い場合、鼻涙管を洗浄し、消炎剤を投与して症状を抑える方法が一般的です。
しかし、流涙症は治療を行っても再発することが多い病気です。それでも、普段から涙を小まめに拭いて炎症を防ぐ、まぶたを常に清潔に保つなど、きめ細かなケアを行うことで症状を軽減することが可能です。
短頭種気道閉塞症候群
鼻べちゃ度合いの高いエキゾチックショートヘアは、空気の通り道である気道が狭くなって呼吸がしづらくなることがあります。主な症状としては、睡眠時に「グーグー、ブーブー」という呼吸音が聞こえる、普段の呼吸のときに「ヒューヒュー」といったぜんそくに似た音が聞こえるなどがあります。
この症状は先天的な構造が原因のため、予防法はありません。治療法は内科療法と外科療法があります。内科療法は、酸素を吸入して体温を調整し、ステロイド剤によって気道の炎症を抑えたり、去痰剤で気道内の分泌物を取り除いたりします。外科療法は、鼻腔の一部を切除して気道を広げる手術が一般的です。
コメント