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経営者取材

社長取材#15,ペットゴー株式会社 黒澤弘

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PT編集部

本日は、ペットヘルスケア領域で成長を遂げ、2022年には東証グロース市場に上場を果たしたペットゴー株式会社代表取締役社長CEO・黒澤弘様にお話を伺います。黒澤社長、どうぞよろしくお願いいたします。

ペット事業の内容

弊社では「ペットヘルスケア事業」を展開しており、現在インターネット上に14店舗を運営し、20年間にわたりeコマース事業を続けてきました。
さらに、2020年からは自社ブランドの立ち上げも行っています。
現在の事業内容を一言で表すと「ペットヘルス×デジタル」です。私たちが目指しているのは、単なる物販ではなく、ペットライフを支える「経済圏」の構築です。コマース・メディア・サービスを連動させ、犬猫と飼い主がより健康で幸せに過ごせる社会を創りたいと考えています。

―2020年に自社ブランドを立ち上げた経緯についてお聞かせください。

20年間通販ビジネスを続けてきた中で、累計265万人のユニーク顧客を獲得してきました。しかし、メーカー都合により商品の販売中止や撤退が起こることがあり、その場合、お客様は愛用していた商品を突然購入できなくなってしまいます。
そうなると、弊社としてもビジネスの継続性が損なわれるだけでなく、お客様も犬猫の健康を維持するために必要な商品を安定的に購入できなくなるという課題がありました。
そこで、商品の企画、製造から流通まで責任を持って取り組まなければならないと考え、自社ブランド「ベッツワン(VETSOne)」の立ち上げに踏み切った、というのが経緯です。

―現在扱われている商品を選ばれた理由について教えてください。

2004年に会社を設立し、2008年には動物病院を買収しました。
犬猫の健康のためには、ペットショップなどで販売されている商品だけでは十分でないと考え、そこから、動物病院で販売されている食事療法食や動物用医薬品を中心に取り扱う方向へとシフトしました。
その結果、多くのお客様が弊社で食事療法食・動物用医薬品・サプリメントなどをご購入いただき、ペットヘルスケア商材の比率が過半数を占めるまでになりました。
その後、先ほどお話ししたメーカー都合による商品の販売中止や撤退が起こることが多々発生し、そうした背景を踏まえ、主要カテゴリーの商品を自社ブランドとして展開することになったのです。
現在の主力商品は、食事療法食の「ベッツワンベテリナリー」で、こちらはオフラインでも1,200店舗以上で販売されています。また、ノミ・マダニの駆除薬「ベッツワンプロテクトプラス」も主力製品です。
今後も新たな商品展開を予定しています。

社長になるまでの経緯

大学卒業後、住友商事、マッキンゼーを経て起業しました。
実家は秋田県大館市で日用品雑貨の卸売業を営んでおり(現在は廃業)、ユニ・チャームさんやライオンさんなどのペットフードやペット用品も扱っていました。
人口7万人ほどの街で、メーカー品を小売店へ卸す事業を通じ、日々の生活を事業で支える姿を幼い頃から身近に見てきたため、将来的には自分も起業して日本を元気にしたいと考えていました。
そして2004年に会社を創業しました。

―幼少期にご両親のお仕事を見て、起業を意識されたのですね。

自営業の家庭で育ち、自然と「将来は自分も事業を起こすだろう」と思うようになりました。
小さい頃から「人を雇用して事業を営める立場になりなさい」と言われて育ちました。住友商事時代には事業の立ち上げ方を学び、マッキンゼーでは問題解決能力を身に付けました。
そして、そろそろ自分で船出すべきだと感じ、創業に至ったという流れです。

―ペット業界を選ばれた理由を教えてください。

第一に、従業員を雇用する以上、会社は成長し続ける必要があります。
そのためには、持続的に成長できる市場を選ぶことが重要でした。
最近の日経新聞で「2050年の家族は親子3人+1匹」と紹介されていたように、今後ますます人に寄り添う存在としてペットが求められていくだろうと考えました。

第二に、個人的な想いとして「世の中のためになる仕事をしたい」という気持ちがありました。
犬や猫は言葉を話せず、社会的に弱い存在です。
加えて、飼い主にとってはかけがえのない存在です。
だからこそ、ペットライフをハッピーにしていくことで世の中に貢献できるのではないかと考えました。

大きな理由はこの二つです。

―社長は現在、保護犬と一緒に暮らしているそうですね。

はい。もともと小さい頃から犬を飼っていましたが、大学卒業後は就職や起業が続き、とても犬を飼える状況ではありませんでした。
犬を飼うなら、きちんとコミットしたいと考えていました。
創業から十数年が経ち、2021年、上場準備の手前あたりでコロナ禍を迎え、社会のムードも変化しました。
リモート勤務が取り入れられるようになり、会社も安定してきたので、妻と話し、「今なら飼える」と決心しました。
そこで、できるだけ保護犬を引き取りたいと考え、私が関わっている一般社団法人Do One Goodを通じて保護団体を回りました。
最初はなかなかうまくいきませんでしたが、保護団体からご紹介いただいたのが少し大きめのトイプードルの子です。

―そして2頭目を迎えたのですね。

1頭を譲り受けた後、「もう1頭いたほうがいいのでは」と思い始めました。
保護団体の方からも勧められ、2頭一緒なら留守番のときも一緒に遊べて寂しくない。
私たち夫婦も本当はもっと飼いたかったのですが、住んでいるマンションは2頭までと決まっていたため、現在は2頭を飼っています。

―ちなみにお名前は。

アプリコットの子が「くれは」、ブラックの子が「アポロ」です。今年で7歳と5歳になります。

―かわいいですね。

ありがとうございます!そう言って頂けるのが最高の幸せです。

人生を変えた経験・出会い

―本でも漫画でも結構です。

難しい質問ですね(笑)。
この質問を聞いた瞬間、直感的に「いや、それは毎日変わっているな」と思いました。
私はこれまで一度も占いをしたことがありません。
人生は自分でつくるものだと考えているので、基本的には「こうなりたい」という思いに基づいて自分で道を切り拓いてきました。
そのため、人生の中で大小さまざまな影響を受けてきましたが、その頻度は本当に多いと感じています。
たとえばロイヤルカナンの日下部社長も、この社長取材で「人と出会うこと自体が人生の糧になる」というようなことをおっしゃっていましたが、まさにその通りで、こうして皆さんとお会いすること自体も影響の一つだと思います。
最近でいえば、今年4月に弊社グループにジョインしたFLAFFYの経営陣との出会いです。これは非常に大きなインパクトがありました。
ペットゴーはこれまで単体の会社でしたが、上場後にグループ会社を持つようになり、それが会社の未来を大きく変えていくと感じています。
結果として、私自身にも新しい変化をもたらしてくれるだろうと思います。
そしてやはり、愛犬のくれはとアポロに出会えたことも大きいです。
それ以外にも多くの出来事がありますが、挙げればキリがありません。
また「人生を変えた経験」という意味では、2022年に株式上場を果たし、上場企業となったことも非常に大きな出来事です。
これは自分たちが望んで選んだ道ですが、やはり人生の節目として強く印象に残っています。

経営者として大事にしているポイント

弊社は「10のコミットメント」という指針を掲げています。
上場企業である以上、成長を続け、収益を上げ、内部統制を徹底し、持続可能な事業を推進していかなければなりません。
その際の基盤となるのが、この「10のコミットメント」です。
採用や人事面談の場でも必ず触れていますし、経営者として最も大事にしてきた部分です。なかでも1番目に掲げている「誠実謙虚」は常に最も重要だと考え、社員全員で共有しています。

―これは創業当初からあったのでしょうか。

いえ、時間の経過とともに必要性を感じ、会社設立から10年ほど経った頃に策定しました。社員全員が共通の物差しを持つことが重要だと考え、他社の取り組みも研究しながら、自分たちなりの指針を時間をかけてつくり上げました。

―「10のコミットメント」は最終的な形なのでしょうか?

将来的に言葉が変わったり、10個が5個に整理されたりする可能性はあると思います。
ただし、ペットゴーが大切にしている「変えてはいけないもの」と「時代に合わせて変わるべきもの」があります。
指針そのものが頻繁に変わるのは好ましくないと考えています。
ペットゴーの存在そのものを表すものですから、大きく変えてしまうと会社のアイデンティティが揺らいでしまう。今後グループに参加する会社が増えていくと思いますが、そうした企業とも共有し、この価値観に共感してくれる経営者とともにグループを広げていきたい。
採用の際も、この指針をベースに判断しています。

―7番目の「ゆるぎない忠誠心」という言葉が少し強い印象でした。

確かに表現は少し修正した方がいいかもしれませんね(笑)。ちょっと昭和っぽい。
ここでいう「忠誠心」とは、会社の成長のために同じ方向を見て進んでいきましょう、という意味です。
もし一人でもそこから外れてしまうと、経験上会社は壊れてしまいます。
実際、忠誠心が薄い人材を採用してしまったり、入社後に失ってしまったケースもあり、採用の難しさを痛感してきました。
だからこそ「継続的に会社を支える意思を持つ仲間であること」を大切にしているのです。

―10番目の「報酬に対する責任」とはどういう意味でしょうか?

例えば月30万や40万円の給与を受け取っているのであれば、その金額に見合う以上の成果を出す必要がある、という考え方です。
もし30万円の報酬を受け取りながら、10万円分の価値しか出せていなければ、それはおかしい。
私は住友商事時代、上司から「100与えられたら1,000にして返せ」と言われて育ちました。つまり、報酬に満足するのではなく、その何倍もの成果を出すべきだという文化です。
この経験が私の考え方のベースになっています。

一緒に働きたい人材

結局「10のコミットメント」に該当する人ですが、
私たちが求めるのは「人格者」です。会社を成長させていくには、一人ひとりがしっかりとした人格を持っていなければならない。
会社という「生き物」も、それによって正しく成長できると考えています。

―特にどういう点を重視されていますか?

採用は、部門長・取締役・私の3人全員「ぜひ一緒に働きたい」と思える人に限ります。「まあいいかな」という妥協は一切しません。社員は重要な人財ですから。
人格者という言葉に加えるなら、一本筋が通っていてぶれない人です。
また、どれだけ優秀であっても、ペットゴーの一員としてカルチャーにフィットできるかどうかは非常に重要です。
能力面ももちろん見ますが、最終的には「人格」と「カルチャーフィット」が大きな判断基準になります。
当社にはエンジニア、デザイナー、獣医師、薬剤師、公認会計士、カスタマーサポートなど様々な職種があります。
いずれも即戦力が求められるため、一定の経験を積んだ人材でなければ務まりません。
ポテンシャル採用も行っていますが、基本的にはすぐに自走できる人でなければ難しいですね。
RABOの伊豫社長が、この社長取材でおっしゃっていましたが「社員数は少ないほどいい」という考えに共感します。数を増やすのではなく、一人ひとりが少数精鋭として力を発揮する組織のほうが理想です。

―そこにも社長の強い芯が感じられますね。

極端な話、私が明日いなくなっても、会社は一人ひとりの人格者が支えていける組織でなければなりません。
会社というものは常にリスクを抱えており、いつなくなってもおかしくない。
その前提に立つと、採用に妥協はできません。
私にとってペットゴーは一つの「生き物」です。
だから最終的に人材を選ぶのは、私ではなく企業としての「ペットゴー」自身です。
採用に時間がかかるのは、そのためだと思っています。

今後のペット事業の展望

先日インターペット大阪で講演した際にも触れましたが、日本はG7の中で最も犬猫の数、飼育率が少ない国です。
一方で人口は決して少なくありません。
これは非常に大きな課題であり、私たち自身の事業だけでなく、日本全体で犬猫が増え、寿命が延び、より飼いやすい環境を整えていく責任があると感じています。
上場企業として、犬や猫が家族の一員として暮らせる社会づくりに貢献していくことは大切な使命です。
また、上場企業である当社には、社会全体に対する責任もあります。動物福祉、飼い主教育、地域との共生など、業界を俯瞰して捉え、持続可能な未来を構想・実装していく立場だと自覚しています。
私たちの事業としては、この20年間で延べ265万人のお客様にご利用いただき、現在は14のEC店舗を展開しています。
その過程で「飼い主がどこに住み、どのような犬猫を飼い、どんな病気と向き合っているか」といったデータベースも蓄積してきました。
さらに自社ブランドの展開に加え、FLAFFYがジョインしたことでメディア事業にも進出しています。
今後はコマースにとどまらず、メディアやサービスへと事業領域を広げ、ピンポイントではなく「面」としてペットライフを豊かにしていきたいと考えています。
特に大手企業がまだ十分に手をつけていない領域に挑戦し、コマース・メディア・サービスをつなぐ「ペットライフを支える経済圏」を自分たちの手で構築していきたいですね。

―ありがとうございます。最後に、社長が「実績を出すコツ」は何でしょうか?

正直、実績を出しているという感覚はありません。失敗も沢山しています。
ただ、強いて言えば「諦めない」ことです。
ペット事業は途中で投げ出してはいけない。
事業がうまくいかない時も軌道修正は必要ですが、その先には必ず犬や猫がいる。
だからこそ、携わる人はみんな“諦めの悪い人”でなければならないと思います。
実績は私ではなく「ペットゴー」という会社そのものが出しているもので、私は代表でありながら、いち社員でもある、という意識でやっています。

―社長の方々はよく「諦めない」とおっしゃいますね。

バイオフィリアの岩橋社長も「打席に立ち続ける」と話していましたが、まさにその通りだと思います。
私たちはAmazonの経営哲学を全社で共有しています。
Amazonほど挑戦を続け、成長し続けている会社はなかなかありません。
彼らのように常に挑戦し、継続的に成長できる会社を、ペット業界の中で目指していきたいと考えています。
顧客基盤、D2Cブランド、ペットデータ、そして人材という無形資産を活かし、単なる通販会社を超えた「ペットライフ企業」として、業界を牽引する存在を目指していきます。

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