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経営者取材

社長取材 #10, 株式会社エスジーラボ 杉浦弘明

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PT編集部

今回は株式会社エスジーラボ(Sunrise Genetic LAB)代表取締役 杉浦弘明様を取材させて頂きます。
杉浦社長、本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、どのようなペット事業を行っているのでしょうか?

ペット事業の内容

主に2つございます。

1つめは犬猫の【遺伝子病検査】です。最新鋭の技術と設備を備えた自社のラボにて、どうぶつ遺伝子の変異によって発症する遺伝性疾患のリスク判定を行っております。例えばブリーダーさんの場合ですと親犬に遺伝子病検査をして頂いて、産まれてくる子犬に遺伝子病のリスクがないかどうかを調べて頂くなどです。ペットショップの場合ですと、オークション会場などで遺伝子病検査を申し込んで頂き、そのうえでペットショップで新しい家族と出会っていただくような流れです。そうすることによって将来的に遺伝子病という怖い病気がなくなる事を目指しております。人間の遺伝子検査はドラッグストアで検査キットを買えるくらい身近なものになっていますが、犬猫はまだまだメジャーではないので、啓蒙活動も併せてやっていきたいですね。

2つめは【わんマッチ】です。先ほどの【遺伝子病検査】のように、遺伝子検査により愛犬の性格分析を行い、飼主様との相性を”科学で解明する”商品です。この商品では飼主様と愛犬の[性格分析]や[相性診断][獣医師・ドッグトレーナーそれぞれからのアドバイス]を提供しております。

犬の性格分析に関しては、今まで犬の性格は犬種によってひとくくりに決められていたと思うんですね。「この犬種は穏やかで、この犬種は獰猛だよ」というように。例えば僕は北海道出身なのですが北海道犬は獰猛でクマとも戦いますから「北海道犬は気が荒い」という犬種のイメージがあります。でもよくよく調べてみると犬の性格は犬種でなく、遺伝子の配列で分類できることがわかってきました。具体的には、ドーパミン受容体の2つの解析領域であるエクソンⅠとイントロンⅡという塩基配列のサイズをみておりますが、例えばゴールデンレトリバーでも6種類の性格分類ができます。思い返せば過去に外来をしている時(杉浦社長は元臨床獣医師)、なついてくれるゴールデンがたくさんいたのですが、中にはモノをかじったり飼主さんにも吠えるゴールデンもいました。「やさしいゴールデンにかぎってなぜだろう?」とずっと思っていたのですが、31頭のゴールデンの遺伝子検査を実施したところ6種類の性格に分類ができ、“やさしくてなつきやすい”ゴールデンばかりではないことが判明しました。

何が言いたいかというと「犬の性格は犬種によってではなく、遺伝子によって決められている」ということです。だからこそ【わんマッチ】の遺伝子検査によって元々もっている愛犬の性格がわかれば、適切な接し方もわかって愛犬との生活をより豊かにしてくれると思います。

人間の性格に関してはQRコードで41の質問に答えて頂き、12種類のタイプに分類しております。質問は会社の入社面接等で使われる適正検査のようなイメージで、犬への向き合い方に比重を置いた質問となっております。最初は150の質問を用意していたのですが、それだと皆様疲れてしまいますので(笑)。心理カウンセラーの方に監修して頂きながら41問に厳選しました。自分の性格と愛犬の性格をお互いに理解することで今後の生活をより豊かにする手助けがしたい。そんな想いで【わんマッチ】の事業を行っております。

— ちなみにねこちゃんとの相性診断はできるんですか?

残念ながら、ネコちゃんにはドーパミン受容体が発見されていないんです…。実は僕は猫派なのでなんとか【にゃんマッチ】を作れるよう頑張りたいんですけどね(笑)。

— にゃんマッチ(笑)!おもしろいですね。私も実は猫派なのでぜひぜひ楽しみにしております!
そんな杉浦社長ですが、どのようにしてこのラボを立ち上げられたのですか?

社長になるまでの経緯

もともと獣医師として札幌で動物病院を15年経営しておりました。その後、後輩に病院を譲渡して教育の現場に転職し、動物看護士を目指す学生たちに教鞭をとっておりました。学生のためを想い厳しく指導しましたが、卒業生たちからは「現場の厳しい世界を教えてくれてありがとう」と言って頂き、本当にやってよかったと思っています。そこからご縁があってお声がけ頂き、現在の遺伝子病のラボを作るに至りました。0からのスタートでしたので、最初は手探りで論文を読んだり関係各所に教えを請いに行ったりと大変でしたが、2022年7月に会社を立ち上げておかげさまで今年で3年目になります。

— 15年も獣医師をされていたとは驚きです…。いわば貴社のわんマッチは“熟練の獣医師監修”なのですね。
続いての質問ですが、杉浦社長の人生を変えたご経験はありますでしょうか?

人生を変えた経験

長男が悪性リンパ腫(血液のがん)になったことです。子供ががんになるというのは僕の人生で予期していませんでした。子供ががんになるというのはものすごくきついんですよ。人生真っ暗ですよね。入院先の病院で寝泊りしていたのですが、子供の病気が完治するまで仕事に集中できなかったので、完治するまで子供と一緒にいようと決意して後輩に動物病院を譲りました。

治療中の話ですが、最初に長男を診て頂いたお医者さんからは「努力します」「頑張ります」「5年生存率は○○パーセントです」というような言葉をかけられたのですが、民間の病院に行ったときに「この病気治りますからお父さん泣かないでください」と言って頂いた事がありました。涙が止まらなくなり、ボロボロと泣いた事を今でも覚えています。患者としては嘘でもいいからそういう言葉がほしいんですよね。そこで「これは飼主さんも同じだ」と思い、動物病院を譲る直前まで飼主様の“心を救う”という意識をもって「大丈夫です。安心してください。治しますから」という事を自分なりにアレンジして使うようになりました。獣医療の教育現場に行ってもそういう事を伝えてきましたし、遺伝子病のラボを作ったことも元々存在する遺伝性疾患のリスクをわかっていれば悲しい思いをしないと思ったからです。人生を変えた経験は後にも先にもこれ以上のものはないですね…。ちなみに長男は今は寛解して、法律家を目指していますよ。

— 壮絶なご経験ですね。言いづらい部分もあったかと思うのですが、ありがとうございます。
遺伝子検査と聞くと実験室のようなイメージですが、背景にはそういった壮絶な闘いや飼主様の心を救うという決意があったのですね。

そうですね。真っ暗になるような人生があり、15年経営した病院も譲渡しましたが、今後も病気に対して不安を抱えている人に出来る限り寄り添っていきたいです。人間の遺伝子もわんちゃんの遺伝子もそうですけど、事前にリスクを知ることができるのであれば知るべきだと思います。

— 杉浦社長が非常に飼主さま想いである事がわかりました。
続いての質問ですが杉浦社長がラボを経営する上で大事にされているポイントどのような事でしょうか?

経営者として大事にしているポイント

ペット業界はグレーな部分もあると思うのですが、検査に従事している者として捏造・改ざん・隠蔽は絶対にしないという事です。科学として出た結果を都合のいいように改ざんすることはできないので、そこは会社の理念として大事にしているポイントですね。

— 業界のグレーな部分にも真っ向から向き合っておられる姿勢は非常に素晴らしいですね…。
そんな杉浦社長が一生に働きたい人材とはどのような方でしょうか?

一緒に働きたい人材

無理ですがもう一人の自分です(笑)。例えば心音を聞きたい時に、「先生、聴診器必要ですよね」というようにサッと環境を整えてくれる人が居心地がいいですね。自分も過去にそういう風に動いてきましたので。レベルは高いかもしれないけど、そういう人材に育てていきたいと思っています。今は研究主任をはじめラボのみんなは気づいてくれる人ばかりですので、そういう方たちとの仕事は楽しいですね。

— ちなみに社長も人材育成に関わっておられるんですか?

今は研究主任に任せて、口は出さずにお金は出すようにしております(笑)。私が口を出すとキツい部分もあるかと思いますので(笑)。いざという時は僕が責任をとりますので、それ以外は任せてやっておりますし、その方がラボ全体が成長していくと思いますからね。

— それは一番理想とされる社長像ですね(笑)。
最後の質問になりますが、今後のペット事業の展望はありますでしょうか?

ペット事業の展望

まずは【わんマッチ】をたくさんの方に知って頂きたいです。半年かけてみんなと力を合わせて子供のように育てて作りあげた商品なので、ものすごく想いがこもっています。私は大学を卒業してから臨床畑を歩んできましたし、ラボのスタッフも全員愛玩動物看護師免許を有しているので、みんな飼主様の手助けをしたいと想っています。【わんマッチ】を多くの人に知って頂きたいです。

【遺伝子病検査】もたくさんの方に知ってほしいです。私たちにとってわんちゃんねこちゃんの遺伝子病を検査するのは当たり前ですが、まだまだ知らない飼主様は多いと思います。遺伝子病を知ることによって病気を防げるわけではありませんが、愛犬が少しでも長生きできるように飼主様が生活を改善する事はできると思います。そこの手助けもしていきたいですね。

【わんマッチ】【遺伝子病検査】を多くの方に知って頂いたら、今度は【オンライン相談】を展開していく予定です。そもそも遺伝子病は、獣医師でもほとんど知らないんですよね。なぜなら獣医学の講義では教えてくれませんし、一般的な獣医の先生方は内科や外科に行きますから。知っていてもごくわずかで、遺伝子病がどういう病気でどういう接し方をすればいいかわかっていないんです。ただ、我々ならば知っている知識が豊富なので、せっかく飼主様が遺伝子病について調べて頂いたのならば、アドバイスできることが開業医よりはあるかと思います。【オンライン相談】では例えば「この子は遺伝子病の発症リスクがありますので、今後はこういうように生活を変えていきましょう」といったアドバイスを我々が行うなどです。他には「わんマッチによってこのわんちゃんは○○な性格とわかったので、しつけはこういうようにやっていきましょう」などですね。やはり、病院に行きたくないわんちゃんねこちゃんが大半ですし、飼主さんにとっても連れていく事はストレスだと思いますので、通院の問題も【オンライン相談】で解決できるかと思います。

— 遺伝子病の存在や「犬の性格は犬種によってではなく、遺伝子によって決められている」ことは知らなかったので本日はとても勉強になりました!
貴重なお話をお聞かせ頂きまして誠にありがとうございました。

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