今回はペトコトフーズでおなじみ株式会社PETOKOTO(ペトコト)代表取締役CEO 大久保泰介様を取材させて頂きます。大久保社長、本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、どのようなペット事業を行っているのでしょうか?
ペット事業の内容
弊社はミッションとして「ペットを家族として愛せる世界へ。」を掲げており、ペットを迎えてから亡くなるまでの一生に寄り添えるコンシェルジュのようなプラットフォームを作ろうとしております。事業としては大きく3点ございます。
1つめが【おむすび】という保護犬・保護猫と家族(人)を結びつけるマッチングサイトです。人と人のマッチングが主流ですが、弊社は犬猫と家族(人)をつなぎ合わせていきたい。サイトでは「相性度診断」という機能を設けていて、ユーザーが6つの質問に答えると保護犬猫との相性度が表示されます。つまり約3000頭の中から運命の子と出会える仕組みです。ご登録頂いている保護団体様に関しても、審査を通過した安全性のある団体様のみで、おかげ様で約400ほどの団体様にご登録頂いております。
2つめが【PETOKOTO MEDIA】というペットの情報メディアです。こちらは2016年に開始しました。当時匿名のキュレーションメディアが流行った時代でしたが、弊社は反対に実名で獣医さんやトリマーさんを発信するメディアを作りました。今でこそ実名のメディアは当たり前になっていますけどね…。ここでは「暮らし」から「病気」まで幅広いペットに関する情報を展開しております。
3つめが弊社の主力事業でもある【PETOKOTO FOODS】というペットフード事業です。具体的には「“エサ”から“ごはん”と呼ぶ世界へ」というコンセプトのもと、ドライフードのような従来のごはんではなくて、手作りごはんのようにおいしくて、かつ総合栄養食であるフレッシュフード「ペトコトフーズ」を展開しております。2020年に発売以来、皆様に支えられて来年で5周年を迎えます。
ペットタイムズ編集部(以下省略・マーカー部分参照):フレッシュフードは従来の固いペットフードと違って作るのが難しいと思いますが、その点はいかがですか?
製造の前段階から非常に難しかったですね。そもそもフレッシュフードは製法上、人間の食品工場で作らないといけないんですね。それにも関わらず、ペットフードは法律上は雑貨扱いのため、保健局からは「人間の食品とペットのフードは製造ラインを分けてください」というご指摘があります。そうなりますと、そもそもフレッシュフードを製造できる工場がないんです。確か100社ぐらいの工場にお願いをしましたが全て断られましたね…。それでも諦めずに開拓した結果、福井県にある工場が引き受けてくださいました。実はそこの社長様が犬を飼っておりまして。その犬は体調を崩していたのですが、ペトコトフーズの試作品を食べさせたらみるみる元気になったんですね。そこで「人間だけでなくペットの食も本当に大事だね…」と意気投合し、現在まで長いお付き合いをさせて頂いております。この福井県の工場は敷地が広いので、将来的にはペトコトフーズ専用の工場を作ったり、地元の子供たちを集めて工場見学ツアーを開催したり、保護犬猫の譲渡会を開催する事などが夢ですね…。
— 是非ドックランもお願いします!祖母の家が福井県の越前なので(笑)
え!工場は越前にありますよ(笑)。近いですね!
あとは地方創生にも取り組みたいと考えています。実は「ペトコトフーズ」は福井県越前市のふるさと納税の返礼品にも入っていますし、北陸銀行様がうちの株主さんでもあるので、チーム北陸で盛り上げていきたいと考えています。
— ふるさと納税の返礼品にあるとはすごいですね!
ちなみにいろいろなペットフードがあるかと思いますが、なぜフレッシュフードを展開されているのでしょうか?
ビジネスの観点からというよりは自分の主観が強いです。保護団体さんからコルク(大久保社長が飼われているコーギーのお名前)を迎えた際に、最初はご指示頂いたドライフードをあげていました。しかしやはり「不透明な部分があるのでは?」と思い「自分も食べられる安心できるごはんをあげたい」と思ったことがキッカケです。その当時アメリカでもフレッシュフードの市場が伸びていたので、そういった要因もありましたね。ただアメリカに比べて日本の食材の価格が約3倍高いので、日本のフレッシュフードは高いと思われる方もいるかもしれません。そのため価格の事も考えてフレッシュフードをドライフードに混ぜながら使って頂く市場を現在作っております。ちなみに、うちのコルクは9歳10kgですが2020年から約5年間ずっと100%ペトコトフーズをあげています。その結果「子犬ですか?」と間違われるほど毛ヅヤがいいんですよ!うちのコルクがペトコトフーズの良さを体現してくれているので、本当は皆様にも100%ペトコトフーズをあげてほしいのですが、当然物価高の問題もありますので今後はドライフードの市場にも参入しようと思います。ただドライフードとはいえ僕が発売するものですので、従来の圧縮過熱したカリカリではなくて、エアドライやフリーズドライのようなドライフードをやろうと計画しているところです。
その他の事業としてはマルイ様と提携してペトコトのクレジットカード【ペトコトカード】を展開しています。【ペトコトカード】をご利用頂くと、【おむすび】にご登録頂いている保護団体様に自動的に寄付されるようなクレジットカード事業です。今まではペットオーナー様のみがお客様でしたが、この事業によってペットオーナー様以外もお客様として迎え入れることができるようになりました。売上の1%を【おむすび】にご登録頂いている保護団体様に寄付しておりますので「保護犬猫の未来につながればいいな」という想いで展開していますね。今後もペットに関する保険や病気の分野で事業を拡充していこうと思っています。
— ちなみに大久保社長が保護犬に関わられる経緯はどのようなものでしょうか?
僕が今飼っているコルクは生後半年の時に迎えたのですが、もともとは保護犬でした。ペットショップの流通でオークションがあると思うのですが、コルクは足が内またのため捨てられてしまっていて…。彼を保護団体さんがレスキューして僕が迎えいれたわけです。一方でコルクのお兄ちゃんはペットショップで30万円で販売されたようでして…。それを知った時に「命の価値の差が人間都合で決められてしまうのはよくない」と思い【おむすび】という事業を始めました。
— 【PETOKOTO FOODS】も【おむすび】も非常に強い信念から始まったものなのですね。
そんな大久保社長ですが、わんちゃん猫ちゃんは昔から飼われていたのですか?
これは様々なメディアで言っておりますが、僕は起業する3年前までは犬猫を触ることも苦手なくらい、距離をとって生きてきました。ユニクロのロンドンで働いていた時も、電車やバスの車内で僕の隣に大型犬がいたり(ロンドンはバスや電車に犬が乗る事ができる)、ホームステイ先に猫がいたりしましたが、それでも全然触れ合わずに生きてきたんですね。噛まれたわけでも、吠えられたわけでもないのですが、勝手に苦手意識がありまして…。家族全員がそこまで好きではなかったことも関係あるかもしれませんね。そんな状況でしたが、当時お付き合いしていた彼女がトイプードルを飼っていまして。僕にすごくなついてきてくれたのですが怖くて怖くて(笑)。今はすごくかわいいと思いますけどね(笑)。そこから少しずつ触れ合っていくうちに触らず嫌いだという事がわかりまして、トイプードルからはじまり中型犬・大型犬・猫という順番で犬猫が大好きになりました(笑)。さらに僕の妻はトリマーさんですので「人生わからないな…」と思いながらペット事業に携わっております。
— 当時の彼女さんのトイプードルとの出会いは一つの転機だったかもしれないですね!
続いてのご質問です。大久保社長が社長になられるまでの経緯を教えて頂けますでしょうか?
社長になるまでの経緯
僕はユニクロのロンドンから社会人を開始して、ずっとマーケティングに従事してきました。当時ユニクロがロンドンに再出店しようというタイミングでしたので、「日本から世界へ」というコンセプトで貴重な経験をさせて頂きました。その後、グリーに転職して採用のマーケティングに従事しました。グリーがゲーム事業で成功して海外進出するタイミングでしたので、世界中の優秀な人達を集める事を任されておりましたね。その当時の僕は全く起業を考えていなかったのですが、グリーから起業する方もいれば起業してグリーに帰ってくる方もおられまして…。今でこそメルカリやマネーフォワードは当たり前のサービスですが、こういったサービスの創業時の役員の方などもグリーにはおられましたので、環境の影響は非常に大きかったです。ここで起業への心理的なハードルがすごく低くなり、グリーの新規事業公募でペット関係の事業アイデアを出してみました。しかし、最終の面接で落ちてしまいまして…。この事業アイデアをサポートして頂いた役員がサイバーエージェントさんをご紹介して頂いたところ、なんと出資して頂けることになり、すぐに会社を作って退職という怒涛の道のりでした。
— 大久保社長がこれまで身を置かれてきた環境は本当にトップクラスですね。
ちなみに株式会社PETOKOTO(ペトコト)の前の会社名は「シロップ」だと伺いましたが、こちらの社名の由来は何だったのでしょうか?
グリーの新規事業公募から起業する中でカフェでアイデアを考えていたらガムシロップが目に入りまして…。会社が「木の幹」を表し、会社から派生するサービスを「樹液(シロップ)」と捉えられるのではないかと。そこから樹液(シロップ)に生命が群がるように、人や動物などの様々な命が共生する社会を創るというコンセプトで「シロップ」と命名しました。語呂がすごくいい事もありましたけどね(笑)。ただ2020年くらいに【PETOKOTO MEDIA】や【おむすび】が日本トップクラスのアクセス数になってきましたので「ペトコトという冠の中で事業を積み重ねていこう」という想いで社名を株式会社PETOKOTO(ペトコト)に変更しました。
— 確かに「ペトコト」というワードはインパクトが強いですよね。
ちなみにユニクロやグリーへはどのような経緯でご入社されたのですか?
実は入社の仕方が少し変わっておりまして…。大学3年生の時にユニクロが募集していたニューヨークに無料で行けるインターンにたまたま受かりました。ありがたい事にそこで出会ったイギリスのトップの方に気に入ってもらい「大学を休学して業務委託でマーケティングをやらないか」とご提案頂きました。当時いくつか内定も頂いていたのですがあまり働くイメージがわかなかった事もあり、大学を休学してユニクロのロンドンで業務委託で社会人をスタートしました。そこで働き始めたらはまってしまい結果的に3年くらい休学する事になるのですが…(笑)。業務委託の後に正式にユニクロで働こうと思ったのですが、そのタイミングでグリーをご紹介頂き、グローバルの新卒として入社致しました。そのため社会人としては2社目ですが、新卒はグリーという事になります。ユニクロもグリーも業態は異なりますが、どちらも「日本からグローバルスタンダード」というコンセプトでマーケティングに従事させて頂いたので、やっていることは似ていたかなと思いますね。
— 学生時代から非常に意識が高かったのですね。
そんな大久保社長の人生を変えた出会いはどのようなものでしょうか?
人生を変えた出会い
出会いに関しては、先ほど申し上げたトイプードルを飼っていた彼女との出会いが一番大きいですね。高校時代の友人たちからは「ペットはビジネスでやってんだろ」と冗談で言われるほど、昔の僕からはペットの「ぺ」の字も出てきませんでしたから(笑)。
起業というマインドですとグリーの環境が一番大きいです。起業家や投資家と聞くとメディアの熱愛報道ででるイメージがあり「どんな人が投資家なのだろう」と思っていました。しかし、グリーでは僕の机の隣に投資家が座っていたり、いろんな人が起業をされていたりしたので「起業ってこんなに楽にできるのか」とハードルが下がった事は非常に大きなキッカケですね。
— 少し脱線しますが人生を変えた映画と言えば大袈裟化もしれませんが、お好きな映画は何でしょうか?
僕は『GO』(2001年)という映画が好きです。ご存知ですか?
— 大好きです!窪塚さん主演の映画ですよね?
当時僕の青春真っ只中で、窪塚さん全盛期世代です(笑)。『GO』は本も好きなくらい僕のバイブルですね。
— 内容は社会問題を扱っていましたが出演者の皆さん全員が格好よくて最高の映画でしたね!もしかして『池袋ウエストゲートパーク』もお好きだったりしますか?
好きですね!世代ですね!ドンピシャです(笑)!(一同大盛り上がり)
— ついつい脱線してしまいすみません(笑)。
続いてのご質問です。大久保社長が経営者として大事にされているポイントはどのような事でしょうか?
経営者として大事にしているポイント
「社会を豊かにしていく」ことです。起業という観点ですと、僕はまだたどり着けていないのですが、個人としての成功を収めた先に社会を変えられると思っています。矢沢永吉さんの名言で「お金がないとしたくない仕事も受けなければいけない。だから自分の信念を曲げることなく本当に自分がしたい事にだけチャレンジするためにまず稼ぎたいんだ」というような言葉がありますが、まさにこの通りだと思います。まずは個人として経済的に息子も妻も含めて安泰に暮らしていけるベースを固めて、その上で僕の軸である「社会を豊かにしていく」ステージで挑戦していきたい。そこにたどり着く事が僕の今のマインドです。
あとは「1人のお客様を見る」という事も大事にしております。メディアを運営していると、100万人が見てくれているという事はわかりますが、そのうちの1人のことは見られないので「1人をできる限り見よう」という事は大事にしていますね。
— ありがとうございます。では続いてのご質問です。
今後大久保社長が一緒に働きたい人材像はどのような方でしょうか?
一緒に働きたい人材
「向き不向きよりも前向きな人」です。「やったことがないからできません…」というマインドではなく「とりあえずやってみるか!」というマインドの人と働きたいですね。あとは犬猫は飼っていなくてもいいのですが、当事者意識を持っている方と働きたいと思いますし、今のメンバーはそんな人達が集まっております。
— 「向き不向きよりも前向きな人」。すごくキャッチ―でいい言葉ですね!ありがとうございます。
では最後のご質問です。大久保社長の今後のペット事業の展望を教えて頂けないでしょうか?
ペット事業の展望
「ペットのことならペトコト」が株式会社PETOKOTO(ペトコト)の名前の由来のため、まずはそう言って頂けるようなインフラになりたいです。具体的には【おむすび】で犬猫を迎えていただき、【PETOKOTO FOODS】で健康に育てていただき、【PETOKOTO MEDIA】やその他の事業で犬猫とペットオーナー様を生涯サポートできるようなインフラの実現です。今後は自社事業としては動物病院などを運営するかもしれませんし、自社で行えない事業として今回の【ペトコトカード】のような企業様とタイアップした事業を行うかもしれません。そしてその先に全ての犬猫と犬猫を好きな方も苦手な方も全ての人々が尊重される社会を創っていきたいです。もともと僕が犬猫を苦手な立場でしたので、犬猫が苦手な方にも配慮した社会設計を実現できるといいなと思っております。
— 僕らにとってはわんちゃん猫ちゃんは身近な存在ですが、苦手だと思っている方もいるわけで、ペットの会社がそういった方たちへの配慮も考えられているのはとても素晴らしい事だと思いました!
本日は貴重なお話をお聞かせ頂きまして誠にありがとうございました。
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