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経営者取材

ペット業界社長インタビュー #6, ロイヤルカナン ジャポン合同会社 日下部真一

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PT編集部

今回は食事療法食でおなじみロイヤルカナン ジャポン合同会社社長 日下部真一様を取材させて頂きます。(キャットショー開催中のご多忙の中、取材にご対応頂きました)日下部社長、本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、どのようなペット事業を行っているのでしょうか?

ペット事業の内容

ロイヤルカナンはペットフードを製造・販売している会社です。ペットフードに関してはいろいろなメーカーがありますが、ロイヤルカナンの1番の特徴としましては一頭一頭の犬と猫に最適化された栄養バランスのペットフードを提供している点です。犬や猫の栄養ニーズは品種、年齢、身体のサイズ、ライフスタイル、健康状態などにより異なります。ロイヤルカナンは、獣医師やブリーダーなどペットの専門家と連携し、犬と猫に関する知識を深め、一頭一頭の栄養ニーズにきめ細やかに応える最適な栄養バランスのフードを提供しています。ご利用いただいたペットオーナーの皆さまに違いを実感して頂ける事がブランド最大の特徴です。

また、ペットの専門家とのパートナーシップにも非常に力を入れております。国内でも250種類以上のフードを提供しておりますので、単に製品を販売するだけでなく、お客様に正しく選んでいただくことが重要となります。そこで「何をもって正しいとするか?」において、専門家の方の知見が必要であると考えています。例えば初めて子犬や子猫を迎えるペットオーナーであれば「ブリーダーの方からどの(弊社の)ペットフードを推奨されるか?」という事が重要となります。そのように専門家の推奨を得て正しくペットフードを使って頂くことが我々にとってすごく大事だと思っています。この点は単にペットフードを作って売るだけではないロイヤルカナンの大きな特徴です。

ペットタイムズ編集部(以下省略・マーカー部分参照):一頭一頭に合ったペットフードを250種類以上も展開されている事には頭が下がります…。
ちなみにロイヤルカナン様はどのように創業されたのでしょうか?

ロイヤルカナンは1968年にフランスで生まれました。ジャン・カタリーという獣医師の「犬と猫の健康を栄養学で支えたい」という想いから始まったブランドです。現在では世界100か国以上で展開しており、その中でも日本は非常に大きな市場で安定的に成長を続けている状況です。

— 世界100か国以上の展開はすさまじいですね!
御社は今年も非常にスケールの大きなキャットショーを開催されておりますが、猫ちゃんの事業展開により力を入れていく予定でしょうか?

ビジネスとしては犬と猫は同等に重要だと考えておりますし、売上も同じような状況です。ただ、これからの市場を考えますと、猫オーナーのニーズがますます強くなっている事を感じます。そのため犬の事業も同じように重要ですが、猫の事業展開は今後さらに強化していくところではあります。飼育頭数の面でも、猫の方が多く安定しているという状況もあります。

ペット業界 キャットショー ロイヤルカナン 日下部社長

社長になるまでの経緯

— 日下部社長がロイヤルカナンの社長になられるまでの経緯をお聞かせ願いますでしょうか?

私は2019年にロイヤルカナンに入社して、2024年8月に社長に就任しました。前職は保険やIT・携帯・航空など複数の業界で仕事をしてきました。このようにお伝えすると腰が据わらない印象を受けられるかもしれませんが、どの会社でもマーケティングを中心に仕事をしてきました。「消費者が求めている事を理解する」「お客様に対して自分たちのブランドが持つ価値を提供する」という点でどの業界においても一貫した業務経験を積んできました。

— 日下部社長の経歴を拝見させて頂きましたが、前職はメットライフ生命やノキア・NEC・ニュージーランド航空など名だたる企業でご活躍されてきたのですね!
マーケティングに長く携わられてきた中で、5年前になぜペット業界の会社にご入社されたのでしょうか?

ペット業界を目指したというよりは「ロイヤルカナンというブランドに関心をもった」という気持ちが正直なところです。特に私が興味をもった要素は2点です。1点目は(先ほども申し上げましたが)きめ細かい製品群です。5年前にご縁があって面接を受けた際に(当然製品の事を調べるわけなのですが)単なるペットフードというよりは「非常に個性の強いポリシーのある製品があるな」「差別化された製品があるな」と感じました。2点目は社員の熱量です。面接でいろいろな方とお話しした中で、製品の力やブランドの理念を社員の一人一人が強く信じていることですね。「熱意をもって仕事をしているな…」と強く印象に残りました。こういった経緯でロイヤルカナンに惹かれて仕事をすることになりました。

— こみいったご質問になるのですが、ご入社されて5年後に社長にご就任されるのは非常に早い事だと思うのですが…

5年前、私はブランドマーケティングという職種でロイヤルカナンに入社しました。大まかに説明しますとロイヤルカナンという会社には3つのビジネスモデルがあります。(1)ブリーダー向けのビジネス(2)ペットショップを通じて販売する総合栄養食のビジネス(3)獣医師の推奨のもとに販売する療法食ビジネスの3つです。ありがたいことに、私が担当していたブランドマーケティングの仕事ではこの3つの領域全てに深く関わる必要がありましたので、ロイヤルカナン全体を俯瞰して見ることができました。もしかしたらその経験が買われたのかもしれません。

人生を変えた出会い

— 人生を変えられた出会いはありますでしょうか?

特定の人物や本ももちろんありますが、今年の8月から社長の立場になり、様々な専門家や社長の方々とお話する機会が増えました。そういった、これまでは接点がなかった方々との出会いはたいへん貴重な経験になっています。例えば、ペット業界の経営者の皆さんとお話すると彼らが持っている自社商品・サービスへのプライドやこだわりは大変刺激になりますし、獣医師やブリーダーの方々が持つ、本やネットには載っていない深い知見には非常に好奇心を刺激されます。こういった出会いから「もっとこんな事ができるんじゃないか?」というように新しいアイデアも生まれます。専門家の皆さまとの出会いは一番のエネルギーになっていますね。本日のキャットショーのイベントや今こうしてペットタイムズさんとお話をさせて頂いている事も私の糧になっていると感じます。

— 恐れ多いお言葉をありがとうございます!キャットショーでご多忙の中、取材を引きうけてくださったことに誠に感謝申し上げます。
続いてのご質問ですが、経営者として大事にされているポイントはどのような事でしょうか?

ペット業界 キャットショー ロイヤルカナン

経営者として大事にしているポイント

一つだけを選ぶとしたら「変化を恐れない事」です。変化を常に念頭に置いて、かつ恐れない事が重要だと思います。「時代の変化が激しくなった」とよく耳にしますが、我々自身もビジネスが順調で伸びていると思っていても実はその裏に想定もしていなかったリスクが潜んでいたり、そのリスクに気づけないことがあるかもれません。極端な例を挙げるとコロナのような事ですよね…。そういった全くコントロールができない事、予想もできない事にきちんと適応できるようにする。そのためには、変化を常に念頭に置いて恐れない事が重要だと思います。進化論を唱えたダーウィンの言葉に「生き残るのは強い者でも賢い者でもなく変化に適応できる者である」という解釈がありますが、私はこの考えがとても腑に落ちています。その考えを少し発展させて「変化に適応するために、より強く、賢くなる」事が重要だと考えています。

— ちなみに日下部社長が「進化論の考え方が腑に落ちている」とおっしゃられたのには何かご経験やごキッカケがあられたのでしょうか?

様々な業界を経験してきた中で、業界トップのブランドや会社が、ある事をキッカケに逆転した事例を何度か見ているからですかね…。わかりやすい例ですと、iPhoneの登場以前と登場以後の話があります。日本の市場ですと、日本のメーカーの携帯電話が日本のマーケットで売られている事が当たり前だった時代がありました。現在では“ガラケー”などと呼ばれていますが、それほど昔の話ではありません。でもその“当たり前”がiPhoneの登場により劇的に変わってしまった。現在、携帯ショップに行かれてみなさん何を買われますか?iPhoneやGoogleのスマホ、韓国・台湾のメーカーの携帯を主に買われるのではないでしょうか?おそらくこの状況はiPhoneが登場する前は全く想像できなかったはずです。こういう事は今後も起こりうると思っています。私はこういう事を様々な業界で目の当たりにしてきた人間なので「変化は起きる(と思っていた方がいい)」と念頭に置いています。トップの産業が何か地殻変動のような事が起きて逆転していくという事は世の中いくらでもあるので、そういった変化に備えて適応していくことがすごく重要ですね。

— 携帯業界でもマーケティング経験のある日下部社長だからこそ、身を以て進化論の考え方の重要さを感じていらっしゃるのですね。
そんな日下部社長が一緒に働きたい人材はどのような方でしょうか?

ペット業界 キャットショー ロイヤルカナン

一緒に働きたい人材

我々とパーパス(存在意義)を共有できる方です。我々のパーパスは「犬と猫の真の健康を実現し、ペットのためのより良い世界をつくる」ことです。「真の健康とは何ですか?」という質問も頂きますが、回答としては、美しい毛並みや色つや、軽やかな身のこなし、目の輝きといった、その猫本来の美しさ力強さが表れている状態です。我々は「病気ではないから健康だ」とは考えておらず、人間の言葉でいうとウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)のような、犬と猫が健康かつ幸せに暮らしていける状態を作っていかなければならない。我々の使命はそこにあります。それが結果的にペットオーナーの皆さまの幸せや、ひいては社会の価値にもつながると信じています。このパーパスにどこまで深く共感頂けるか?が重要となります。こと社員に関しては(先程申し上げましたけど)変化を恐れず自分で考え実行していく意志をしっかり持った方と一緒に働きたいと思っています。

また、獣医師・ブリーダー・ペットショップなど外部のパートナーの方々に関しても、当社のパーパスに共感頂けるかどうかは重要です。我々だけではできない事がたくさんありますので、それをパートナーの皆さまの専門的な知識で支えて頂きたい。お力添え頂きたいです。獣医師による診療行為ももちろんそうです。ブリーダーであれば、単純に犬や猫をお渡しするだけではなくて、犬や猫の知識が十分でないペットオーナーに正しい知識を提供して頂く。ペットオーナーに正しい知識を提供していく事も我々の責任でもありますので、その責任を一緒に果たせるパートナーの方々と協力して仕事をしていきたいと考えています。

— わんちゃん猫ちゃんの健康を推進する企業様は多いですが、その先の“真の健康”まで追求されている姿勢は素晴らしいですね…。
では最後のご質問です。今後のペット事業の展望をどのようにお考えでしょうか?

ペット事業の展望

飼育頭数に関していえば、ペット業界全体で徐々に減っているという厳しい状況です。猫の飼育頭数はほぼ横ばいですが、犬の飼育頭数はどの調査を見ても年々減っています。そういったデータがある中で、反対にペットオーナーの健康に対する意識は年々高くなっています。一頭一頭にかける時間もお金も増えており、犬と猫に手厚いケアをしてあげたいというニーズの高まりを実感する事は多いです。つまり「犬と猫を大事にするユーザーに応えられるサービスを提供できるか?」という事にメーカーとしての生き残りがかかっていると思います。根本的に飼育頭数を増やしていけるのであれば変えていきたい想いはありますが、人口と同じで変えられない部分がどうしてもありますから…。だからこそ、高まるニーズにお応えできるような製品やサービスを提供していかなければならない。これは全てのメーカーが行っている事だと思いますが、我々にとっても重要だと思っています。

— もっといろいろなお話を聞きたかったのですが、お時間となってしまいました。
本日はご多忙の中、大変貴重なお話をお聞かせ頂きましてありがとうございました!

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