ペット業界の経営者にせまる プレミアムなペット情報サイト

経営者取材

ペット業界社長インタビュー#4,株式会社バイオフィリア 岩橋洸太

https://pettimes.jp/wp-content/uploads/2024/06/AdobeStock_240737482-1-scaled-e1723508977136-500x500.jpeg
PT編集部

今回はフレッシュペットフード『ココグルメ』『ミャオグルメ』で有名な株式会社バイオフィリアの岩橋代表取締役社長兼CEOを取材させて頂きました。
岩橋社長、本日はよろしくお願い致します!早速ですが、どのようなペット事業を行っているのでしょうか?

どのようなペット事業を行っているか

当社の事業としては手作りペットフード【ココグルメ事業】というものが主力の事業です。”フレッシュペットフード”や”手作りフード”と言われるジャンルの商品をパイオニアとして開拓しているのが、当社の位置づけです。ここでパイオニアと申し上げたのは5年前に始めた当時、全国的にフレッシュフードという新しいジャンルのペットフードがなかった事と、そこから私どもが市場を開拓していった自負を持っている点からです。メインの販売チャネルとしては商品が定期便でご自宅に届くというtoCのサブスクで、冷凍のためクール便で届くようなものになっております。

ココグルメ ペットフード

ペットタイムズ編集部(以下「PT編集部」):そもそも「フレッシュペットフード」とは何でしょうか?
ドライフードなどは聞きなじみがありますが、私も詳しい事は知らず…

ありがとうございます。フレッシュフードを説明する上で、従来の市場の中心であったドライフードとウェットフードの2種類を説明させてください。ドライフードとウェットフードの多くは「人間は食べないけどペットとか動物には食べさせてOKだよ」みたいなものです。要するに飼料グレードが中心となっております。

まずドライフードですが、よく「カリカリ」と言われている茶色いペットフードです。これは原材料を高温高圧で固めて粉みたいにしたもので、ドライ加工と呼ばれる製造加工をされたものです。

次にウェットフードは缶詰とかパウチにされたものです。ドライとの対比でウェットと呼ばれていますが、分類としてはレトルトに該当され、ちゃんと食材がわかるものになっております。その反面ペットフード特有のにおいがするものもあり、人が食べる食品と比べて品質面に関してやや課題が残る印象です。

以上がこれまでの市場の中心でしたが、より人間が食べるものと同じ品質に近づけたのが【フレッシュペットフード】です。私どものフレッシュフードは完全に人間が食べるものと同等の品質の食品グレードになっております。特徴は大きく2つございまして、原材料と製造方法です。

まず原材料に関してお伝えしますと、私たちのフレッシュフードは食品グレードのため、人が食べる原材料しか使っておりません。製造も、人間の食品工場で食品と同様に作ることにこだわっているので、ペットフード工場では作っていません。ものとしては私たちが食べられる品質になっていますので、試食会では私も全然食べていて…味はおいしいですよ(笑)。ちなみに食べてみたことはありますか?

PT編集部:実はビールと一緒に食べてみたことが(笑)。
製造上、ココグルメは人間も食べられる基準と知っておりましたのでつい…(笑)。

(笑)。ありがとうございます。あくまでわんちゃんのための食べ物なので人間みたいな味付けはできないのですが、うま味や素材本来の味をギュッと閉じ込めているのでわんちゃんたちは大喜びしてくれています。
お話にも出して頂きました2点目の製造方法についてですが、私たちのフレッシュフードは低温加工で製造しておりまして、100度以下の過熱をして調理しています。人間の料理でも焼くよりも茹でる方が食材への負荷が少ないといいますが、それを意識していますね。なるべく原材料の味とか栄養素をそのまま閉じ込める製造方法になっているというところが特徴で、お母さんが手作りをしたようなごはんになっております。

PT編集部:新ジャンルのペットフードという事で、開発への並々ならぬ熱量を感じますね…
ちなみにフレッシュペットフードを作ろうと思った背景は何でしょうか?

まずこの会社自体は動物の殺処分を何とかなくしたいというところで立ち上げたんです。小学生のころからわんちゃんと一緒に過ごしていて、動物が大好きだったんですよね。その中で、他の動物も助けるために「殺処分をなくそう」という事で会社を立ち上げたんですけど、起業後に愛犬のリヴとぴのを亡くしてしまって。2人とも病死だったんですね。寿命を迎えたのであればしょうがないと思えたんですけど「同じ病死ってことは自分の育て方が悪かったんじゃないか?」と思い激しいペットロスに襲われてしまったんです。そこで思ったのが、亡くなってしまった事そのものももちろん悲しかったんですが、何か自分がしてあげられなかった後悔こそがペットロスの原因である事に気づいたんです。「自分がやり切れてなかった事ってなんだろう?」と考えたら、食に行きつきました。そこから自分があげていたペットフードを調べていくと悪い噂があったり、業界全体としてもまだまだ課題のある領域である事に気づいて。ペットフードの品質に疑問を抱くようになったことから始まりました。

食に関するデータでいえば手作りのフードと通常のフードを食べた場合でペットの寿命を比較すると、手作りの方が32か月くらい長生きしたというデータがあったんですね。ペットの平均寿命が15年の中で約3年の違いが食によって生じる事実はかなりのインパクトがありませんか?人間にとってみれば100歳まで生きられる方が80歳になってしまうという事ですから。そこで初めて手作りのペットフードというものがある事を知り、それを作っていこうと立ち上げたのがココグルメです。「食事に気を付けていればもっと長生きができた」と。「ほかの人にはこんな想いをしてほしくない」という想いでこれを作りました。

ココグルメ ペットフード

PT編集部:ココグルメ誕生の裏には深い悲しみや後悔があったんですね…
ちなみに社長になられるキッカケはどのようものだったのでしょうか?

社長になるまでの経緯

明確なキッカケがございまして。ペットと一緒に過ごしていく中で「なんて尊い存在なんだろう」と思っていたんですけど、中学1年生の頃に福岡の方で猫の虐殺事件が起きまして…。本当に言葉で言い表せないひどい事件でした。それが自分の中の価値観が大きく変わった経験でして。その日は1日中泣いて苦しんだし、虐殺された猫ちゃんもかわいそうなんだけど「もし自分のリヴとぴの(岩橋社長の愛犬たち)がこんな目に合ったら…」と思うと本当に恐ろしくて。「これは絶対何とかしないといけない」と子供ながらに強く思いましたね。その事件をきっかけに動物の課題を変えていくために起業やボランティアや政治など色んな選択肢を考えたんですけど、「まずは自分が何かを変えられるように実力を身につけなければいけない」と思い新卒で証券会社に入社しました。

PT編集部:中学1年生の時点で社会の事件を自分事として捉える事ができる感受性や倫理観には頭が下がります。
証券会社はペット事業での起業を見据えられてご入社されたんですか?

そうですね。いずれはペット事業に関わるという前提で入社をしたというところはあります。幸運なことに、証券会社に入社後はIPOの部門に配属されました。ここまでは考えていなかったんですけども。そこである時株式会社ユーグレナの社長の出雲充さんが証券会社に訪問に来られて熱く語っているんですね。「ミドリムシは世界を救うんだ!」みたいな。これって、まさに私も事業を通して「殺処分をなくすんだ!」ってことを考えていたので、それを実際に上場まで果たしてやられている方がいるんだと。そのパッションに背中を押されたような感覚になりまして「よし私も起業だ!」と思ったのが大きかったですね。

PT編集部:パッションは伝染するんですね!
ちなみに起業後はどのような苦労をされたんでしょうか?

結果、起業してから2年間で4つの事業をやりましたが全部失敗して1000万円くらいあった資金が2万円くらいまで落ち込みました。そもそも想いから入っているので事業構造を理解していなかったんですよね。立ち上げまでは勢いでいけたんですが、立ち上げ後からココグルメを始めるまでの2年間はとても苦労しました…。証券会社では第三者である投資家の視点で事業を見ていくわけで、現場で当事者として事業を経験する事はできなかったので経験値が足りなかった事を反省しましたね。今思えば実際に事業をやっている会社に行って、事業の経験を積んで勘所をおさえた上で事業をやるべきだったなって思います。

PT編集部:1000万円が2万円に!
そこからどのような経緯で立て直しをされたんですか?

一つ一つの失敗から学んでいく事と、元々の想いの2つをとても大事にしていたので、諦めないでずっとチャレンジしていたみたないところが要因かと思います。身銭を切って失敗して学んでいるので、学習スピードもサラリーマンより相当高かったのではないかと思います。あとは起業はどれだけ続けられるかが大事だと思っていて。よく1%成功するかしないかって言われたりしますけど、いかに打席に立ち続けるかが大事です。当たるまで振り続ける、打席に立ち続ける想いが大事なんだと思います。「軽く金儲けできるんじゃないか」って考えで起業すると「これ大変だなぁ…やっぱやーめた」で終わっちゃうと思うんですよね。

PT編集部:想いや学習の量こそが打席に立てる回数に比例するんですね。
そんな岩橋社長の人生を変えた経験はありますでしょうか?

バイオフィリア 社長 ドッグラン ペット

人生を変えた経験

出会いで大きかったのが、弊社取締役の矢作(やはぎ)との再会です。元々高校の同級生で仲もよかったのですが、矢作はエンジニアとして就職していて、大人になってからはしばらく会っていなくて。私は証券会社を辞めた当時、スタバに行って「自分でサイトを作るぞ」って頑張っていたんですが、難しくて全然できなくて(笑)。苦戦していたところ、右斜め前を見ると「あれ、見知った顔がいるぞ」って(笑)。それが彼だったんです。よくエンジニアを探すのは苦労するって言うじゃないですか?それを覚悟してプログラミングスクールに通っていたんですが一瞬で解消されました(笑)。彼もその頃起業を考えていたんですけど、エンジニアスキルはあるけど情熱の向ける先が見つかってなかった。逆に私は、エンジニアスキルはないけどやりたい事が明確にあった。この2人が上手くマッチしたというところがあって、証券会社を辞めて1か月後にエンジニアが見つかりました(笑)。まさにラッキーパンチですね。

PT編集部:そんなドラマみたいな事があるんですね!
ちなみにどちらのスタバだったのか気になります(笑)

学芸大学のスタバです(笑)。その後も8年間ずっと2人で苦労していて、最初の2年間は特に矢作にも迷惑をかけたなと思うんですけれども。喧嘩をしながらもなんだかんだ一緒に続けてくれているので、それは嬉しいなと思います。

PT編集部:映画のような関係性は聞いていてとても羨ましいですね…
続いての質問ですが、経営者や社長として大事にされているポイントはございますか?

経営者として大事にしているポイント

個人と会社で分けて考えています。まず個人に関しては、私は1人1人生まれた役割や意味があると思っていて、それを全うしていきたいと思っているんですね。社会には色んな問題があると思います。でも社会は1人1人の行動の積み重ねで作られているので、各々の行動を変えていけば世界のどんな問題も解決できるはずなんです。私は特に動物の問題を強く感じていたので、問題を感じて何もしないのではなくてそこを変えられるように行動してこうと思い起業に至りました。そういった使命感ややるべき事を私はとても大事にしています。

会社に関しては、それをビジネスとして何らかの価値を社会に与えて大きくしていくというところが大事だと思っております。自分の会社だけ儲けるような、かつ社会にあまり価値を生み出さないような事はしないようにしていこうというのは経営者として会社単位で大事にしている事です。

PT編集部:これまでもペット好きの方にお会いしてきましたが、岩橋社長は特にペット愛が強いように感じます。
なぜそこまでペットを自分事として考えられるのでしょうか?

バイオフィリア 社長 ドッグラン ペット

自分のペット以外も愛する理由

おっしゃる通りで、うちの会社は動物好きなメンバーが集まっているんですけど、社員の皆さんからも「異常じゃないか」と言われるくらい私は動物が好きなんです(笑)。理由として大きくは2つあって。

1つ目はリヴとぴのと一緒に過ごした経験です。物心つく頃にわんこと触れ合うことで「あっ、この子たちって人間と同じで色んな事を感じて考えて僕らと何も変わらないな」「同じ命だな」って。それを直で感じたっていうのが土台としてありますね。それがキッカケで、猫ちゃんの虐待の事件も自分事として捉えられましたし。「この子たちは人間と何が違うんだろう?いや何も違わない」って思ったのが、自分事としてとらえるようになったキッカケです。

2つ目は生物学・倫理学的な側面からです。先ほどお伝えした考えは「自分のエゴじゃないのか?」ということを生物学・倫理学的な観点から考えたんですね。そうして調べていくと哺乳類は人間とDNAが98%一致していますし、倫理的な観点でも「知能が悪いから命を大事にしなくていい」となると「人間でも知能が高くない方をきっていい」ってなると思うんです。そうやって自分の考えを整理していき「動物の命は絶対大切にすべきだ」と確固たる信念を持っているので、この2つにが合わさって「動物めっちゃ好き」ってなっています!

PT編集部:ペットを家族と思っている方は多いですが、そこから先1歩2歩踏み出して他のペットや動物も自分事として捉えられている方は少ないですよね。わが子だけを見られている方は多いと思うんですが。

そうですね。そこは明確に違うと思っています。1対1の愛情と、私みたいに博愛の1対nの愛情は違うなと思っていて。元々は1対nの方を何とかしようと思っていたんですけど、今は1対1の愛情も大事だと思ってやっています。将来両者をつなげられるようにしていきたいですね。

PT編集部:1対n!まさに岩橋社長の事ですね!
そんな岩橋社長が一緒に働きたい人はどのような人材でしょうか?

どのような人材と一緒に働いていきたいか

2つの要素を持つ方です。

1つ目は想いです。私と同じように「自分が社会を変えていくんだ」という働くことの意味を感じていらっしゃる方です。当社のミッションである「動物と人間の壁をなくしていく」という想いに共感頂けて「自分の実力を全て動物に捧げる(というとオーバーですけど)」「動物のために働きたいんだ」という方だと非常に嬉しいです。

2つ目はそれを実現できる成果を出せるような方です。想いだけですと動物は救えないと思うので、実際に結果として出せる方。想いだけではなくて行動にもつなげられる方と一緒に働いていきたいですね。

PT編集部:バイオフィリア様を志望する方は必見の内容ですね!
続いてのご質問ですが、岩橋社長の今後の展望はどのようなものでしょうか?

ペット事業の展望

3つの軸があります。

1つ目は販売チャネルの拡大です。現在はtoCの通販事業が中心の会社で、これが売上の大半を占めています。私としてはこのフレッシュフード・手作りフードを当たり前にしていきたいので今後はtoBの販売チャネルの割合も増やしていきます。具体的にはオフラインの小売店舗の拡大ですね。実際に今イオン様や旅行会社のエイチ・アイ・エス様(グランピング施設の宿泊時のメニューとしての提供サービス)、ローソン様ともお取引しています。あらゆるチャネルでココグルメを取り扱っていただいて、オンラインではリーチできないようなお客様にもココグルメを買って頂きたいです。

2つ目の軸としては新商品です。すべての食の面でお客様に価値を提供していきたいと思っているので、ココグルメではできない事を他の商品で実現していく。販売チャネルの拡大が縦軸だとしたら、横軸としては商品ラインナップの拡大が2点目です。

そして最後、3つ目はグローバル展開です。先程の縦軸・横軸に加えて奥行のイメージで、今後はココグルメを販売する国を広げていきます。この3次元の動きをしていくというのが今ココグルメの動きで、いかにこの立方体を大きくするかに注力しています。
具体的には10年後1000億円の売上を目指しておりまして、かなり険しい道だとは思うんですけど。イナバ様が1700億円を達成されているので「私もできる!」と鼻息荒くやっています!そのためにはグローバル展開が重要だと思っているので、規模を大きくしてより多くの動物を幸せにしていきたいと思っています。

PT編集部:ココグルメは海外展開も見据えられているんですか!
ちなみにグローバルでいうとどこの国へ進出されているんですか?

始めたばかりではありますが、今は香港と台湾の2か国に進出しております。私たちの国にはない商習慣や国民性などのいろんな壁があるのでPDCAを回しながら1歩ずつ進んでいるところです。そうして学習していき海外進出のノウハウをためて、ゆくゆくはアメリカとか中国とか巨大な市場に挑戦していきたいです。そもそもペットフードは食という領域でもあるし、日本企業が勝てる領域じゃないかと思ってるんですよね。世界に出ていくスタートアップ・起業家の先駆けになっていけたらと思っています。

PT編集部:もっとお話をお伺いしたかったのですがそろそろお時間となってしまいました。
岩橋社長、本日はお忙しい中貴重なお時間を頂きありがとうございました!

コメント

この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP