「犬の多飲多尿は病気のサイン」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
しかし、「実際、多飲多尿って量はどれぐらいなの?」「基準がわからないから、多尿になったとしても気が付かないかも」と思う方がいると思います。
犬の多飲多尿とは
多飲多尿とは、その名のとおり、たくさんの水を飲み、その飲んだ量だけ多くおしっこをするということです。
ただし、夏のような暑い時期はたくさんの水を飲むことがありますし、逆に冬や秋など涼しくなってくると水をあまり飲まなくなることがあります。
多飲の基準
もともとの体質があるでしょうし、「多飲」がいったいどれぐらいの量なのか、よくわからないと思います。
しかし、病気のサインである多飲は「異常なほど水を欲する」のです。具体的には、一日の水を飲む量が体重1kg当たり100mlを超える場合は、病的な多飲のサインになります。
例)体重5kgの犬の場合
5×100ml=500ml
500ml以上=病的飲水量
400m~500ml未満=要注意
目安としては、フードボウルに水を入れるとすぐに飲み干してしまうほどの勢いで、ガブガブ飲む場合は要注意です。
計測方法
- 500mlのペットボトルから犬のフードボウルに水を入れます。
- 犬が水を飲み干して、フードボウルが空になったら、再度500mlのペットボトルの続きから水を足します。
- 1日(24時間)経ったあと、残ったペットボトルの水の量を測ると、犬がどれだけ水を飲んだか計測できます。
ただし、この計測方法は飼い主さんが一日中、自宅にいる場合にのみ実践しましょう。
留守の間に愛犬が水を飲みほしてしまった場合、水をすぐ足せない状況になってしまうと脱水を引き起こす可能性があります。
長時間留守にする場合
- 水を計量カップで測り、フードボウルなどの容器に入れましょう。
- 容器に入れた水の量をメモします。
- 帰宅後、残っている水の量を測ることで、留守中の飲水量がわかります。
この計測は、少なくとも3~5日は行いましょう。
多尿の基準
続いて、多尿の症状について解説します。
犬は、一日に2~4回のおしっこが適切と言われています。
マーキングを除き、5回以上のおしっこをする場合は、多尿と診断されることがあります。量を基準とするとその目安は、一日の尿の量が体重1kg当たり50mlを超える場合、多尿と判断されます。
例)体重5kgの犬の場合
5×50ml=250ml
250ml以上=病的多尿
200ml~250ml未満=要注意
計測方法
ペットシーツに尿をする犬の場合は、ペットシーツの重さを測ることでおおよその尿量の計測ができます。
屋外でしかおしっこをしない犬の場合は、見た目の量をよく観察して、尿量が多くなったと感じたら動物病院に相談しましょう。
多飲多尿で疑うべき病気
多飲多尿は、病気のサインと言われますが、実際どのような病気を疑うべきなのでしょうか? 多飲多尿になる代表的な疾患をご紹介します。
糖尿病
人でも発症する糖尿病は、犬にも近年増加傾向にある疾患のひとつです。犬の糖尿病の症状は、人とほぼ同じです。
ごはん(ドッグフード)を食べると、血糖値が上昇します。その血糖値をある一定の数値に保つためにインスリンが分泌されますが、そのインスリンが上手に働かなくなることで糖尿病を発症します。
糖尿病が発症した場合
経度の糖尿病の場合は、ごはん(ドッグフード)の内容物や量をコントロールをして、糖尿病が今以上に悪化しないようにします。これを食餌療法と呼びます。
重度の糖尿病の場合は、食餌療法だけでなく、人と同様にインシュリン注射を投与することになります。毎日、ごはん(ドッグフード)を食べるたびに、飼い主さんが愛犬にインシュリン注射を打つのです。
かわいい大切な愛犬に毎日、嫌がる注射を打つのは、お互いにストレスを抱えることになりかねません。糖尿病が発症する原因は、遺伝性のものが多いと言われていますが、偏った食事や運動不足、ストレスがたまりやすい生活を送っていることでも発症すると言われています。
糖尿病のサイン
糖尿病になると、次のような初期症状が現れます。
いつでも喉が渇いているような症状が続き、水をフードボウルに入れるとすぐに飲み干してしまい、飲水量が異様に増え、1回のおしっこの量も増えます。
また、ごはん(ドッグフード)を食べているのにだんだんと痩せてくることが特徴です。
慢性腎不全
腎臓の機能が長期間にわたり、ゆっくり低下していく病気です。
高齢犬に多く見られますが、近年では、成犬と呼ばれる5~6歳前後でも発症することがあります。慢性腎不全の恐ろしいところは、目立った症状が発生せず、知らず知らずのうちに病気が進行してしまうことです。
慢性腎不全が発症した場合
慢性腎不全はステージ1~からステージ4に分けられますが、ステージ1ではほぼ無症状です。
ステージ2で、多飲多尿の症状が見られます。水をたくさん飲み、薄い尿をたくさんする出すようになります。小型犬では、大型犬並みの量のおおしっこをすると言われています。
ステージ3では、食欲がなくなり、無理して食べたとしてもすぐに食べたものを吐いてしまいます。ほとんどの飼い主さんがこのステージ3で、動物病院に来院するようです。
ステージ4になると、合併症も引き起こし、毎日投薬が必要になります。
慢性腎不全のサイン
異様に水を飲みたがり、大量の薄いおしっこをするようになります。多飲多尿の段階では、まだ元気ですが、ごはん(ドッグフード)の食べむらが現れます。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
多飲多尿になったとき、まず疑うべき代表的な疾患のひとつでもあるのが、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)です。副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、5歳以降のどの犬種でも発症することがある疾患ですので注意が必要です。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)が発症した場合
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、その名のとおり副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気で、下記のような症状が現れます。
- 多飲多尿
- 食欲が異様に増し、食べ物ではないものまで飲み込もうとすることがある
- 左右対称の脱毛
- 皮膚が黒ずむ(色素沈着)
- 筋力の低下により、すぐ疲れてしまう
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の治療には、ステロイド剤の投与など、投薬治療が主となります。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)のサイン
異様に水を飲みたがり、大量のおしっこをするようになります。
また、異常な食欲でドッグフードの袋を食いちぎり、吐くほどフードを食べ続けてしまうことがあり、近くに食べ物がない場合は、ティッシュペーパーなどを誤食してしまうこともあります。
多飲多尿かなと思ったら
「水を飲む量が増えたかな? やたらとおしっこをするようになったかな」と少しでも感じたら、もしかすると病気のサインかもしれません。手遅れになる前に動物病院に行くことをおすすめします。
まとめ
「犬の多飲多尿は要注意だけど、実際どれくらいの量なの?」はいかがでしたか?
多飲多尿に隠された病気のサインやちょっとした変化に気が付いてあげることで、早期治療により症状を抑えられる場合があります。
病気になってしまうと、治療費も家計に響いてしまうため、ペット保険に加入を検討してみてもいいですね。
著者:miki.m
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