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ボーダーコリーのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2019年07月25日
- ペットの健康
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ボーダーコリーと言えば、非常に賢く、身体能力の高さから、牧羊犬としてよく知られる犬種です。また、近年では飼い主と愛犬が一緒に楽しむドッグスポーツの名選手として活躍しています。
そんな活発で賢いボーダーコリーにも気を付けた病気がいくつかあります。本稿では、ボーダーコリーのかかりやすい病気の症状、治療、予防方法について解説しましょう。
ボーダーコリーのかかりやすい病気の傾向
ボーダーコリーは、犬種として骨関節疾患、および眼疾患にかかりやすい傾向にあります。ボーダーコリー特有の遺伝病もありますので、子犬の両親が何か病気をもっていないかを確認しましょう。
ボーダーコリーのかかりやすい病気の概要と症状
股関節形成不全
「股関節形成不全」とは、股関節を形成している寛骨臼が浅く、少しの外力で簡単に脱臼してしまう状態です。軽度であれば症状はありませんが、中等度から重度では腰を振って歩くようになり(モンローウォーク)、座るときに横座りをするようになります。
肘関節異形成
「肘関節異形成」は、上腕骨、橈骨、尺骨のいずれかに異常が起こり、関節のかみ合わせに異常を来す疾患です。骨の成長期である生後4から10か月で発症することが多いと言われています。
肘関節異形成の症状として、前足をかばうように歩く、運動を嫌がる、前肢の変形が見られます。
愛犬のボーダーコリーの成長期、上記のような症状が見られたら、動物病院を受診しましょう。
コリー眼異常(コリーアイ)
「コリー眼異常(コリーアイ)」とは、眼球を覆っている脈絡膜が、成長段階で異常を起こす疾患です。
軽度であれば症状はありませんが、重度になると目の出血や失明に至ります。眼球底部の網膜の疾患である網膜剥離を発症すると、コリー眼異常を誘発すると言われています。
白内障
「白内障」とは、目のレンズである水晶体が白濁する疾患です。
犬の白内障の多くは老化とともに7歳以上で発生しますが、ボーダーコリーでは2歳以下の若年性白内障を起こすことがもあります。これは遺伝的な要因によるものです。また、糖尿病や高コレステロール血症などの全身性疾患に併発する場合もあります。
白内障の症状は、視力の低下から失明に至ります。目が見えにくくなった、暗い所では見えていないなどが思い当ったら要注意です。
セロイドリポフスチン症
「セロイドリポフスチン症」は、脳内に老廃物が蓄積し、脳細胞にダメージを与える疾患です。
遺伝的に脳内の老廃物を分解する酵素が欠損することで起こり、ボーダーコリーには、この遺伝的疾患をもった個体が存在します。
セロイドリポフスチン症の症状は1歳以上で現れ、ふらつきなどの運動障害、情緒不安定といった知覚障害、視力障害が引き起こされます。
ボーダーコリーのかかりやすい病気の予防と治療
股関節形成不全の予防と治療
股関節形成不全の予防は、股関節に負担をかけないように、ボーダーコリーに与えるフードの内容や量を制限するなど、体重管理を徹底することが大切です。また、フローリングの上にマットを敷くなど滑りにくくする工夫も重要です。
股関節形成不全の治療は、内科治療、または外科手術によって症状を改善します。内科的治療では、鎮痛剤の投与などにより疼痛の緩和を行います。内科的治療のみで改善が見込めない場合には、外科的に大腿骨頭切除術や人工関節設置術を行います。
肘関節異形成の予防と治療
肘関節異形成の予防は、ボーダーコリーの成長期に当たる生後4から10か月ごろの体重管理と適度な運動です。また、関節への負担を軽減するため、床の滑りやすさや段差には注意してあげましょう。
肘関節異形成の治療は内科療法と外科療法に分けられます。症状が軽度の場合は、鎮痛薬や抗炎症薬を投与し、運動制限を行います。骨の変形が重度の場合や、痛みが強い場合は外科手術によって骨切りを行ったり、関節を固定します。
コリー眼異常(コリーアイ)の予防と治療
コリー眼異常(コリーアイ)の治療法、および予防法は残念ながら確立されていません。
しかし、放置すると危険なので、早期の発見のためにも大切な家族であるボーダーコリーの日ごろのチェックは重要です。また、網膜剥離の治療や予防も大切です。網膜はく離は、抗炎症薬や利尿薬を用いて、はく離した部分の再癒着を待つことで治療します。
白内障の予防と治療
白内障だけでなく、併発する恐れのあるほかの疾患を予防するために、ボーダーコリーに対する適切な食事管理や体重管理、適度な運動を行うことが望まれます。また、早期発見が大切な疾患ですので、目が見えにくい様子がないか、黒目をのぞき込んで白濁していないかを日ごろからチェックしましょう。
初期の白内障では、症状の進行を遅らせると言われている目薬の点眼を行います。進行した白内障の場合は、外科手術によって白濁した水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入します。
また、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、その治療も行います。
セロイドリポフスチン症の予防と治療
セロイドリポフスチン症は、ボーダーコリーに見られる遺伝性疾患なので予防法はありません。子犬の両親がセロイドリポフスチン症の遺伝子を有していないかを確認することが重要となります。
また、セロイドリポフスチン症の治療法は残念ながら確立されていません。しかし、一度発症すると急速に進行する傾向があるので、異常を感じたらすぐに動物病院の受診をおすすめします。
ボーダーコリーのかかりやすい病気のまとめ
遺伝性疾患の予防は難しいと言われていますが、ボーダーコリーは飼い主とその家族に対して愛情深い性格です。ぜひ家庭内でスキンシップを図り、早期発見に役立ててください。
また、かかりやすい病気を知ることは、何に気を付ければよいのかを知ることです。一日でも長く愛犬が健康な日々を過ごせるように、気を付けてあげましょう。
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