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ラグドールのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2020年03月18日
- ペットの健康
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ラグドールは、顔や手足などに特徴的な斑が入るミディアムロングの被毛を持つ猫種です。しっぽは体長と同程度の長さで、筋肉質な体格をしています。
ラグドールとは「ぬいぐるみ」を意味する言葉ですが、その名のとおり、抱かれるのを好む傾向があります。日本でも人気のラグドールですが、どんな病気にかかりやすいのでしょうか。
ラグドールのかかりやすい病気の傾向
ラグドールは、腎疾患、心疾患、感染症とさまざまな病気に注意が必要です。また、長い被毛に起因する病気もあるので、日ごろの手入れは怠らないようにしましょう。
ラグドールのかかりやすい病気の概要と症状
尿石症
「尿石症」は、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のいずれかに結石が形成される疾患です。
ラグドールでは、特にシュウ酸カルシウムという成分の結石ができやすいと言われています。
症状は、結石が形成される部位によってさまざまですが、主に頻尿、血尿、腹痛が見られます。また、結石が、尿管や尿道などの細い部位に詰まることもあります。その場合は、急性腎不全を呈し、急激な嘔吐、よだれ、尿が出ないといった症状が現れます。
毛球症
「毛球症」は、毛玉が消化管内に詰まってしまい、腸閉塞による元気や食欲の低下、嘔吐、下痢が見られます。吐物は独特の便臭がすることがありますので、いつもと違う臭いを感じたら、すぐに動物病院を受診してください。
毛球症は、ラグドールのように被毛が長めの猫種によく見られます。毛玉を上手に吐ける子はいいのですが、そうでない子は要注意です。
肥大型心筋症
「肥大型心筋症」とは、心臓を構成する心筋が肥厚し、固くなることで心臓の拡張障害を呈する疾患です。
一度に拍出する血液の量が減少するために循環不全を起こします。また、心臓内で血液の乱流が発生し、心房内に血栓が形成されやすくなります。この血栓が心房内から大動脈を通り、大腿動脈の分岐部で詰まることを「動脈血栓塞栓症」と言います。
症状としては、元気や食欲の低下、呼吸が速い、疲れやすい(運動不耐性)、腹水貯留が見られます。動脈血栓塞栓症の場合は、急激な後肢麻痺、後肢の冷感、後肢の痛みが現れます。愛猫のラグドールにこうした症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
猫伝染性腹膜炎(FIP)
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」とは、この猫腸コロナウイルスが突然変異によって強い病原性を獲得し、腹膜炎を特徴とする激しい症状を引き起こす疾患です。
FIPは滲出型と非滲出型に分けられます。滲出型の症状は、発熱、元気や食欲の低下、腹水、胸水、心嚢水貯留が見られます。一方、非滲出型では発熱、元気や食欲の低下、黄疸、再生不良性貧血、ぶどう膜炎などの眼症状、発作などの神経症状が見られます。
ラグドールは、猫腸コロナウイルスというウイルスの抗体保有率が高いという報告があります。また、アメリカの研究では、ラグドールはFIPの発症率がほかの猫種と比較して高いというデータもあります。
ラグドールのかかりやすい病気の予防と治療
尿石症の予防と治療
尿石症の予防は、食事管理による尿pHの調整です。一般的にシュウ酸カルシウム結石は酸性の尿でできやすいと言われています。また、煮干しや牛乳など、カルシウムが多く含まれる食品も結石の生成に影響しますので、過度の摂取は控えましょう。
また、水をいつでも飲める環境にしてあげることや、トイレの環境を清潔に保つことも、尿量を増やして結石をできにくくすることにつながります。
尿石症の治療は、結石の成分によって方針は異なります。ストラバイトを始め、尿pHを調整することで溶ける可能性のある結石の場合は食事療法を行います。しかし、ラグドールに多いとされるシュウ酸カルシウム結石の場合は、食事の変更によって溶けることはないため、外科手術によって結石を摘出する必要があります。
毛球症の予防と治療
毛球症の予防としては、定期的なブラッシングが挙げられます。ただし、念入りにやりすぎると、逆に皮膚を傷つけてしまう可能性がありますので注意が必要です。また、毛玉を溶かすサプリメントがあるので、愛猫のラグドールが毛玉をうまく吐けない場合には使ってあげるといいでしょう。
腸閉塞が起こっている場合は、外科手術によって毛球を摘出し、壊死した腸管を切除します。
肥大型心筋症の予防と治療
肥大型心筋症の予防法は確立されていません。しかし、内科的治療でコントロールが可能ですので、心筋症の兆候が見られたときは検査を受けてください。また、聴診によって心雑音が聴取される場合もあるので、定期的な検診も早期発見には重要です。
肥大型心筋症の治療は、血管拡張薬によって血圧をコントロールし、心臓の負担を軽減させます。同時に、血液抗凝固薬によって血栓形成を予防します。
また、腹水貯留や肺水腫が認められる場合は、利尿薬によって体の水を抜きます。動脈血栓塞栓症の場合は、血栓溶解剤によって速やかに血栓を溶かす必要があります。この際、壊死した末端の細胞からの毒素が、体内を循環する再灌流障害には十分に注意が必要です。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の予防と治療
現在、猫伝染性腹膜炎(FIP)に対する特効薬はありません。そのあめ、二次感染を防ぐ目的での抗菌薬の投与や、脱水補正のための輸液療法を行うことがあります。
猫腸コロナウイルスは、何が原因で突然変異を起こすのかはまだわかっていません。ほかの病気にも言えますが、ストレスは個体の免疫力を低下させる要因になりますので、飼育環境の見直しなどは発症を抑える可能性はあります。
愛猫のラグドールがFIPを発症してしまったら、しっかりと手指を消毒し、ほかに猫を飼育しているなら発症猫との接触を避ける必要があります。
ラグドールのかかりやすい病気のまとめ
ラグドールはおとなしい性格ですので、体の不調を訴えることをあまりしないと考えられます。飼い主が注意深く観察することで見つかる疾患もあるので、日常のスキンシップを大切にしてください。
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