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アメリカンショートヘアのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】

アメリカンショートヘアのかかりやすい病気の傾向

アメリカンショートヘアがかかりやすい病気のなかで、遺伝的疾患で注意したいのは、腎泌尿器疾患です。

また、アメリカンショートヘアには、糖尿病や関節炎など、肥満に続発する疾患も多いのが特徴です。肥満は生活習慣による予防が十分に可能です。

アメリカンショートヘアのかかりやすい病気の概要と症状

多発性嚢胞腎

「多発性嚢胞腎」は、アメリカンショートヘアで多いとされる遺伝性疾患のひとつです。

多発性嚢胞腎とは、腎臓の内側に液体の入った袋(嚢胞)が形成され、それによって腎臓が圧迫されて腎障害を引き起こす病気です。嚢胞は、年齢とともに数が増えて大きくなっていきます。

症状は腎不全と同様で、尿量の増加、尿が薄くなる、食欲低下、嘔吐などが見られます。

尿管結石

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腎臓で作られた尿は、尿管という細い管を通って膀胱に運ばれます。この尿管に結石が出来ることを「尿管結石」と言います。

極小さな結石であれば膀胱まで通過しますが、ある程度の大きさの結石である場合は、尿管に詰まってしまう可能性があります。すると、腎臓で作られた尿が逆流し、急性腎不全という病気を起こします。

尿管結石は、アメリカンショートヘアに限らず、あまり水分を摂らない猫全般に好発する病気です。症状としては、急激に元気がなくなる、食欲がまったくなくなる、排尿が見られない、嘔吐、よだれが見られます。

肥大型心筋症

「肥大型心筋症」は、心臓を構成する心筋が厚くなり、内腔が狭くなる病気です。心筋は厚くなると同時に硬くなるので、心臓が膨らまなくなります。すると、送り出される血液の量が少なくなるので、循環障害が起こります。また、心臓内で血液の乱流が起こるために、血栓が形成されやすくなります。

症状としては、元気や食欲の低下、疲れやすくなる(運動不耐性)などが見られます。心臓内に形成された血栓は、血流に乗って大腿動脈の分岐部に詰まることがあります。これを動脈血栓塞栓症と言います。

愛猫のアメリカンショートヘアが急に後ろ足が動かなくなる、後肢を触ると痛がる、後肢が冷たくなるなどの症状が見られた場合は要注意です。

糖尿病

アメリカンショートヘアのかかりやすい病気、糖尿病の症状

「糖尿病」とは、糖の利用がうまくできなくなり、血糖値が高値を示す病気です。糖は体内でエネルギーとして利用されていますが、糖尿病では代わりに脂肪がエネルギーとして利用されます。すると、ケトンという体にとって毒となる成分が作られてしまいます。

また、猫の糖尿病は人間と同じように、体質や栄養過多、運動不足、肥満などが病気の原因です。アメリカンショートヘアは、太りやすい体質のため、栄養過多運動不足によって肥満になりやすい傾向にあります。

ちなみに、猫の場合は、体内のインスリンの不足、あるいはインスリンが十分でも体が反応しないことによる2型糖尿病が多いと言われています。

糖尿病の症状は、飲水量が増える、尿量が増える、元気や食欲の低下、体重の減少、嘔吐などが見られます。

アメリカンショートヘアのかかりやすい病気の予防と治療

多発性嚢胞腎の予防と治療

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多発性嚢胞腎は、遺伝性疾患のため予防法が確立されていません。愛猫のアメリカンショートヘアの尿が薄くなる、水を飲む量が増えるなど、腎不全を疑う兆候が見られた場合は、早めに検査を受けてください。多発性嚢胞腎と診断された後も経過観察のために定期的に通院しましょう。

多発性嚢胞腎の治療は腎不全という病気の治療と同様です。腎臓に障害が起こると、体内の毒素を排泄できなくなります。よって輸液療法により尿の量を増やして、毒素の排泄を補助します。

また、血管拡張薬を用いて高血圧をにならないようにします。これによって腎臓への栄養供給が良くなりますが、これらは根本的な治療ではないため、症状の悪化には常に注意が必要です。

尿管結石の予防と治療

尿管結石という病気の予防は、アメリカンショートヘアの食事管理によって結石の形成を抑制することです。すでに膀胱結石などの既往歴がある場合は、必ず食事内容の変更をしましょう。

急性腎不全の症状が現れている場合は、早急に治療を行わなければなりません。具体的には、尿管に閉塞している結石を除去する必要がありますが、病気よりも麻酔によるリスクが非常に高くなります。

そのため、一度アメリカンショートヘアの腎臓に管を入れ、逆流した尿を抜いて急性腎不全の症状を和らげた後、外科手術によって尿管から結石を摘出します。また、利尿薬を用いて、尿管から膀胱に結石を押し流す治療を行うこともあります。

肥大型心筋症の予防と治療

肥大型心筋症の予防法は確立されていません。しかし、この病気は心臓の音を聴くことで雑音が確認できる場合があるので、アメリカンショートヘアを動物病院に連れて行き、定期的な検診が早期発見に役立ちます。早期の治療が行えれば、肥大型心筋症は投薬によってコントロールが可能な病気です。

肥大型心筋症の治療は、血管拡張薬を用いて心臓への負担を軽減します。また、血栓形成予防のために、血液抗凝固薬も併用します。

愛猫のアメリカンショートヘアに動脈血栓塞栓症が起きている場合は、血栓溶解薬によって速やかに血栓を溶かす必要があります。一時的とはいえ、血液の供給が遮断されていた末端の組織は、少なからず細胞の壊死を起こしています。血栓が溶けて血液の流れが再開されたとき、壊死した細胞由来の毒素が一気に体内を循環することがあります。この再還流障害には十分注意が必要ですので、血栓の溶解も慎重に行います。

糖尿病の予防と治療

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糖尿病の予防は、肥満を防ぐことです。アメリカンショートヘアは脂肪が付きやすい体質の子が多いので、日ごろから食事管理や適度な運動を心がけ、病気のリスクを抑えましょう。

糖尿病の治療には、インスリンの注射によって血糖値をコントロールします。最適なインスリン量を決定するために時間がかかることがあります。また、糖の少ない食事に変更することもこの病気をコントロールするのに重要です。

アメリカンショートヘアのかかりやすい病気のまとめ

アメリカンショートヘアは、人懐っこく性格のいいので、ついつい甘やかしてしまいがちです。過度に食事を与えた結果、肥満体型になることがあります。

実のところ、アメリカンショートヘアで注意すべきは、病気というよりも肥満ですので、適切な生活習慣を心がけてください。また、定期的な検診により、適切な体重管理を行うといいでしょう。

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