柴犬のかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】

柴犬のかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】

柴犬のかかりやすい病気の傾向

日本犬として真っ先に思いつくのが柴犬ではないでしょうか。ピンと立った耳、くるっと巻いた尻尾など、きりりとしたイメージがありますが、とても甘えん坊です。

しかし、人気のある犬種にはつきものですが、好発する病気がいくつかあります。その中でも、犬アトピー性皮膚炎、膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニア、緑内障について解説します。

柴犬のかかりやすい病気の概要と症状

犬アトピー性皮膚炎

「柴犬といえばアトピー」と言うくらい、柴犬は「犬アトピー性皮膚炎」が多い犬種です。犬アトピー性皮膚炎は「環境アレルゲンに対するIgEが関連した特徴的な症状とかゆみを伴う皮膚炎」と定義されます。

つまり、アレルギーの原因物質が体に入ってきて、それをやっつけようとIgEが作られることでかゆみといった皮膚症状が出てしまう状態を犬アトピー性皮膚炎と呼びます。

環境アレルゲンは、ダニ、カビ、花粉が多く、これらと接触することで首や腋、下腹部や内股に慢性的な皮膚炎が起こります。皮膚疾患の中でも頻繁に遭遇する病気ですが、感染症や食物アレルギーなど、ほかの皮膚疾患でも皮膚にかゆみや炎症がみられるため、診断のためにはひとつひとつきちんと調べる必要があります。

膝蓋骨脱臼

柴犬のかかりやすい病気、膝蓋骨脱臼と椎間板ヘルニアの症状

大腿骨(太ももの骨)の端っこには滑車溝という溝があり、そこに膝蓋骨という小さな骨が収まっています。膝を曲げ伸ばしするときは、この骨が滑車溝を滑ることで動きを滑らかにしているのですが、膝蓋骨が滑車溝から外れてしまう状態を「膝蓋骨脱臼」と呼びます。

脱臼には内側脱臼と外側脱臼があり、柴犬は内側脱臼が多い犬種です。脱臼が起こる時期で分類すると、先天的に脱臼しているケース、成長とともに脱臼が慢性化していくケース、けがや事故で脱臼してしまうケースがあり、柴犬はどのケースも見られます。

重症度では4段階に分けられます。

  • グレード1「指で膝蓋骨を押すと脱臼するが、指を離すと元に戻る。普段の生活の中で自然に脱臼することはない」
    グレード1の子は、動物病院で獣医さんに指摘されるまで気付かれることはないでしょう。
  • グレード2「指で押すと容易に脱臼するが指を離しても自然には元に戻らない。普段の生活の中で自然に脱臼することがあり足を引きずって歩くようになるが、元に戻ると治まる」
    この段階で症状が見られるため、初期症状として気づかれることが多い段階です。
  • グレード3「普段から脱臼したままで、指で押すと正常な位置に戻せるが、指を離すと脱臼した位置に戻る」
    グレード3でも歩き方が普通で、飼い主さんが脱臼に気づいていないことがあります。
  • グレード4「普段から脱臼したままで、指で操作しても正常な位置に戻せない」

先天的なものや成長とともに脱臼するようになった場合は痛みが出ないことが多いですが、けがや事故の場合は痛みが出ます。

椎間板ヘルニア

背中には小さな背骨が並んでおり、背骨と背骨の間には椎間板というクッションがあります。そして背骨の上を脊髄神経という太い神経が走っています。「椎間板ヘルニア」は椎間板が上に飛び出して神経を圧迫してしまうことで神経症状を起こす病気でで、柴犬によく見られます。症状は圧迫する神経の場所や圧迫の程度によって変わり、重症度を5つのグレードに分けられます。

  • グレード1「一番軽度で、圧迫された部位の痛みだけがある状態」
  • グレード2「麻痺は出ていませんが、ふらつきが出て正常に歩けない状態」
  • グレード3以降「麻痺が出てきて、グレード3は自力で排尿が可能であり浅部痛覚(皮膚の痛みの感覚)がある状態」
  • グレード4「浅部痛覚がなくなりますが、深部痛覚(骨を強くつまんだときの痛みの感覚)は残っている状態」
  • グレード5「深部痛覚まで消失した状態で、ここまで来てしまうと回復率は非常に低くなる」

柴犬に麻痺が出ていればお家でもすぐにわかると思いますが、痛みだけだとわかりにくいかもしれません。その場合によく見られる症状は、急に動かなくなる、動いたときにキャンと鳴いて震えている、ジャンプしなくなった、立ち上がらなくなったなどです。

緑内障

柴犬のかかりやすい病気、緑内障の症状

動物の「緑内障」は、一般に高眼圧による緑内障のことで、眼圧が高くなることで正常な眼の機能を維持できなくなってしまった状態です。

眼圧は房水という眼の中の水の動きで調節されており、房水の流れが妨げられてしまうことで眼圧が高くなってしまいます。柴犬を始めとする動物ではコントロールが難しく、治療を開始しても一年くらいで失明してしまうことが多い病気です。

緑内障はいくつかの種類に分類されますが、柴犬は「原発性閉塞隅角緑内障」というタイプになりやすいとされています。緑内障の症状は、眼の充血、眼が開きにくくなる、瞳孔散大、眼が飛び出したようになる牛眼、失明などがあります。

柴犬のかかりやすい病気の予防と治療

犬アトピー性皮膚炎の予防と治療

柴犬のかかりやすい病気、犬アトピー性皮膚炎の予防にはシャンプー
確実な予防法はありませんが、アレルゲンとの接触を避けることとスキンケアが重要です。

室内のアレルゲンを除去するためには、徹底的な掃除をすることが有効です。柴犬が生活する周辺にカーペットやクッションは置かないようにするか、こまめに洗濯をしましょう。スキンケアとしてはシャンプーが有効です。アレルゲンを落としながら保湿もできるようなシャンプーを選びましょう。

また、かゆみを抑えるためには、かゆみ止めの薬を使います。かゆみ止めには外用薬と内服薬があり、症状に合わせて使い分けたり組み合わせます。

膝関節脱臼の予防と治療

先天的な脱臼は予防が難しいですが、それ以外では生活環境や運動の仕方に気をつけることで予防が可能です。フローリングのような滑りやすい所で遊んでいて滑って転んでしまったり、ベッドやソファ、階段の昇り降りで転んでしまったときが脱臼しやすいため、こういったことを避けます。

柴犬は元気で運動量が多いため、散歩やドッグランでしっかり運動させて、室内ではおとなしく過ごす習慣をつけましょう。

治療で最も重要なのは、(予防とも重複しますが)膝に負担をかけない生活をすることです。肥満は膝に大きな負担をかけるため、体重の管理は特に気をつけましょう。また、関節の保護のためにコンドロイチンやグルコサミンのようなサプリメントを与えることもあります。

内科的なコントロールが難しい場合や、手術をしないことでのリスクが大きい場合は外科手術を行います。

椎間板ヘルニの予防と治療

柴犬のかかりやすい病気、椎間板ヘルニの予防と治療
膝蓋骨脱臼と同様に、椎間板ヘルニアでも肥満はリスクを上げるため柴犬の体重の管理は非常に重要です。

愛犬の柴犬が発症した場合、症状が軽度であればまず内科治療を行います。消炎鎮痛剤を与えながらケージレストといって狭いところで安静に過ごし、症状が落ち着くかどうか経過を観察します。

内科治療を行っても痛みや麻痺といった症状が改善しない、最初から症状が重度の場合は外科治療を考慮します。外科治療は脊髄神経を圧迫している椎間板を摘出、または減圧をする手術を行います。

緑内障の予防と治療

緑内障の確実な予防法はなく、眼圧を測定しないと確定診断ができないため、愛犬の柴犬に兆候が確認できなくても定期的に動物病院を受診して視力が残っているうちに発見してあげることが大事です。

片側の眼に緑内障が発症した場合、反対側の眼も将来的に緑内障になる可能性がありますが、そちらに予防的に点眼をしたところ、発症するまでの時期を伸ばせたというデータがあります。

緑内障の治療は、点眼薬で眼圧を下げることから始めます。眼圧を下げる効果のある抗緑内障薬には多くの種類があり、効果や副作用の有無を見ながら選択します。

急性緑内障という状態になると、柴犬が突然眼を痛がったり元気がなくなります。その場合は緊急性が高いため、すぐに動物病院を受診してください。

柴犬のかかりやすい病気のまとめ

柴犬は見た目は精悍で凛々しいですが、とてもデリケートで痛みやかゆみに弱い子が多い犬種です。今回取り上げた病気は、かゆみや痛みを主症状とするため、発症するととても強いストレスを受けます。早期を発見して、きちんと柴犬の治療を行い、ストレスのない暮らしをさせてあげましょう。

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