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フレンチブルドッグのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2019年07月10日
- ペットの健康
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フレンチブルドッグはそのユニークな外見が魅力ですが、その外見のため、なりやすい病気がいくつかあります。
そうした解剖学的な見地からフレンチブルドッグによく見られる病気について解説しましょう。
フレンチブルドッグのかかりやすい病気の傾向
フレンチブルドッグは、鼻が潰れたような顔立ちはとても愛嬌がありますが、同時に解剖学的には呼吸がしづらいという弱点があり、「短頭種気道症候群」の子が多く、「熱中症」になりやすいので注意が必要です。
また、フレンチブルドッグは「軟骨異栄養犬種」といって軟骨に変性を起こしやすいグループにも属しており、「椎間板ヘルニア」にかかることも多くあります。
フレンチブルドッグのかかりやすい病気の概要と症状
短頭種気道症候群
フレンチブルドッグを始め、ブルドッグ、パグ、シーズー、ボストン・テリアなど鼻が短く潰れたような形をしている「短頭種」は、鼻や喉、気道などがほかの犬種に比べて極端に狭い状態になっています。この構造が原因で生じる呼吸器症状をまとめて「短頭種気道症候群」と呼びます。
まず、鼻の入口が狭くなっている状態は「鼻腔狭窄」と呼ばれます。鼻腔狭窄の状態では空気の自然な出入りが妨げられてしまいます。次に、軟口蓋という上顎の奥の部分が喉の入口を覆うように伸びている状態は「軟口蓋過長」と呼ばれます。
軟口蓋がどの程度伸びているかによって症状は変わりますが、重度の場合は呼吸困難の原因になります。そのほか、喉の入口が狭くなっていたり、喉や気管といった気道の形に異常が見られたりして、これらも呼吸困難の原因になります。
症状は、軽度なものであれば安静時の呼吸音がグーグーやブーブーといった音がするという程度です。重度になってくると鼻での呼吸では不十分になり、パンティングという口を開いて速い呼吸をするようになります。おうなると、呼吸での体温調節がきちんとできなくなってしまい、高体温になることもあります。また、酸欠状態になり失神することもあります。
熱中症
体温が上昇して40度以上になると、うまく呼吸ができなくなったり、脱水を起こしたり、体の血液循環ができなくなってしまい、そこからショック状態や臓器障害を起こす病気を「熱中症」と呼びます。
犬は人間と違って汗をかいて体温調節をすることができず、呼吸が体温調節のメインになっています。そのため、人間よりも熱中症のリスクが高いのです。特に、フレンチブルドッグのような短頭種は呼吸をしづらい特徴があるため、より熱中症のリスクが高くなります。
初期症状は、口を大きく開けてゼーゼーと苦しそうな速い呼吸が見られ、また、よだれの量が増えます。その状態が続くと循環不全と酸欠が起き、ぐったりしてチアノーゼ(血中の酸素が不足して、皮膚や粘膜が青黒くなること)が見られ、けいれんを起こすこともあります。
椎間板ヘルニア
背骨はたくさんの小さな骨が並んでおり、骨と骨の間には椎間板というクッションがあるため、骨同士が直接触れないようになっています。そして、背骨の上には脊髄神経という太い神経が背骨と並行して走っています。「椎間板ヘルニア」は、椎間板が何らかの原因で飛び出してしまい、脊髄神経を圧迫する病気です。圧迫する神経の場所や圧迫の程度によってさまざまな症状が見られます。
圧迫が軽度の場合、その部分の痛みが見られます。急に動かなくなった、動いたときにキャンと鳴いて震えている、ジャンプしなくなったなどの症状が典型的です。圧迫がもう少し重度になると、ふらついてしまい正常に歩けなくなります。さらに進行すると麻痺が出てきます。麻痺は足だけでなく、自力での排尿や排便ができなくなることもあります。
フレンチブルドッグのかかりやすい病気の治療と予防
短頭種気道症候群の予防と治療
フレンチブルドッグがかかりやすい短頭種気道症候群の予防方法として重要なのが、症状を悪化させるようなリスクを取り除いておくことです。太っていると症状が悪化しやすいため、体重のコントロールには気をつけましょう。また、興奮したり、体温が上昇することもリスクになるため、過剰に興奮させないようにして、暑い時期には暑さ対策をしましょう。
治療方法は、問題のある部分の外科手術が根本的な治療になります。特に若いうちに鼻の一部を切除して空気の通りを改善させる外鼻孔拡張術や、伸びすぎている軟口蓋の一部を切除する軟口蓋切除術を行うことで症状の改善が期待できます。
熱中症の予防と治療
予防方法はとにかく体温を上げないことです。室内では換気や空調に注意することが重要で、夏はみなさん気をつけてエアコンを入れていますが、意外と5月くらいの梅雨に入る前の気温が急に上がるときにも熱中症は見られます。早め早めの対応をしましょう。
外出するときは、呼吸状態を見ながら日陰や涼しいところで、こまめに休憩を取ってください。夏は、日中に散歩をさせないようにすることはもちろんですが、夜になっても陽が落ちてしばらくはアスファルトがまだ暑いので、注意が必要です。人間よりも体の位置が地面に近い犬にとって暑くないか、しゃがんだり手を地面の近くに置いて確認する習慣をつけましょう。
また、脱水を悪化させないよう、こまめに水分補給をします。散歩の時はタオルや保冷剤の用意をお勧めします。
もしフレンチブルドッグに熱中症を疑うような症状が見られたら、すぐに涼しい場所に移動し、濡らしたタオルで体をくるんで保冷剤を首やワキ、内股に当てて冷やします。そして、できるだけ急いで動物病院を受診してください。かかりつけの病院に行くまでに時間がかかるようなら、とにかく緊急性が高いので一番近くの病院を受診してください。
椎間板ヘルニアの予防と治療
肥満はヘルニアのリスクが高くなるため、フレンチブルドッグの体重コントロールが重要になります。また、後ろ足で立つなど、腰に負担がかかる運動も避けたほうがいいでしょう。
もし、ヘルニアになってしまったら、治療は内科治療と外科治療があります。内科治療は安静にして消炎鎮痛剤を使用します。内科治療を行っても症状が改善しなかったり、症状が重度だった場合は外科治療を考慮します。外科治療は神経を圧迫している椎間板を摘出する手術です。
フレンチブルドッグのかかりやすい病気のまとめ
フレンチブルドッグは性格が陽気な子が多く外見がユニークなため、ハマってしまう人が多い人気犬種です。続けて何代もフレンチブルドッグを飼う人もたくさんいます。このように人気がある犬種は、どうしても交配による遺伝性疾患や犬種特有の病気が出てきてしまいます。
フレンチブルドッグを飼おうと考えている方には、よく見られる病気や飼い方について勉強していただき、異常の早期発見と早期治療ができるようにしていただきたいと思います。
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