ポメラニアンはドイツ原産の犬で、ほかのスピッツ系の犬と同様にサモエドという大型犬が先祖の犬種です。つぶらな目で見た目は愛くるしく、また賢くてしつけがしやすい犬種です。
また、ポメラニアンは小型犬で日本の住環境にも合っていることから、とても人気の高い犬種です。2018年のジャパンケネルクラブの登録頭数ランキングでも多くの犬種で登録数が減少傾向にある中、19,148頭で前回から705頭増えて、堂々の4位にランクインしております。
そんな人気犬種のポメラニアンがかかりやすい病気とその予防法について紹介していきます。
ポメラニアンの病気に対する傾向
ポメラニアンは日本で飼育されている代表的な小型犬です。小型犬であるがゆえに、小型犬に多い病気が、このポメラニアンにも多く見られます。
気管虚脱や僧帽弁閉鎖不全症といった呼吸器や心臓の病気、膝のお皿が外れてしまう膝蓋骨脱臼や股関節の大腿骨頭と呼ばれる部分の強度が低下してしまうレッグ・カルベ・ペルテス病、首の骨の緩みが起こる環軸椎不安定症といった病気がそれに当たります。
本稿では、その中で気管虚脱について解説します。
ポメラニアンのかかりやすい病気の概要と症状
気管虚脱
犬の気管虚脱は気管がつぶれてしまうことにより、咳や呼吸困難などの呼吸症状を伴うようになる原因不明の疾患です。
気管は軟骨でできており、ある研究では気管軟骨における軟骨細胞の減少、およびグリコサミノグリカンや硫酸コンドロイチンの欠如がその病態に関与していることが示されていて、国内では軟骨保護薬により症状が改善するという報告があります。
症状としては、空気の通り道が狭くなることで、クラリネットのリードのような形状をとなるため、ガチョウのような「ガーガー」という“いびき音”を発生します。また、狭い部分で気管支粘膜が刺激され、あるいは気流の乱流により、気道内の粘膜が腫れたり、炎症が悪化したりすると言われています。
この狭い部分は呼吸動作による気道内の圧較差の影響を受け、頸部の気管虚脱は息を吸う時に、胸腔内の気管虚脱は息を吐く時に悪化します。多くの犬では頸部、ならびに胸腔内の虚脱の双方を引き起こしており、また、喉頭炎や慢性気管支炎を合併することが多く見られます。
犬種では、ヨークシャーテリアやポメラニアン、プードル、マルチーズ、チャウチャウのようなトイ犬種から小型犬で多いとされ、大型犬ではまれです。発症年齢は広く1~5歳で、肥満傾向の犬によく見られます。
症状は気管のつぶれ具合に依存しますが、徐々に進行して呼吸困難や治りの悪い咳をするようになります。痰(実際には確認できない)をのどに絡めたような湿った、あるいは乾いた咳があり、前者の場合、飼い主さんは嘔吐と見間違えることがあります。
血液検査では肝臓の値が上昇していることがあり、低酸素性の肝障害が認められることがあります。診察では、胸部レントゲン検査では息を吸うときと吐くときで気管の太さの変動を検証します。画像検査で判断がつかない場合は、呼吸器内視鏡検査が必要になる場合もあります。
ポメラニアンのかかりやすい病気の予防、治療
気管虚脱の予防と治療
治療は咳や呼吸困難の程度によって、対症療法の薬による治療、あるいは根治を目指した外科手術のどちらかが行われます。
対症療法の薬による治療が適応になる無症状、あるいは一時的な気管虚脱の犬は、普通は様子見でも良いです。このような場合には、一時的な呼吸の苦しさを防止、あるいは改善するために咳止め薬と共にに気管支拡張薬などを予備的に使います。
また、興奮することや咳をすることによって呼吸が苦しくなってしまう状態に対しては、麻薬性の鎮咳薬に加えて、精神安定薬による鎮静、そして、酸素吸入を行います。また、咽頭、扁桃腺、喉頭、ならびに気管、気管支内の炎症を抑えるためにコルチコステロイドが使用されます。
なお、物理的に潰れてしまった気管の形状を正常な形状に戻す薬はなく、あくまでも対処療法になってしまいます。根本的に潰れてしまっている気管虚脱には、気管外プロテーゼ、あるいは気管内ステントという、気管の外側、あるいは内側から、気管が潰れないように支えるために外科手術が必要です。
ただし、各種手術の合併症、ならびに改善する度合いは重症度や術者の経験によってさまざまで、飼い主さんの希望が 「単に咳を抑えたいのか」、もしくは「発作を予防できずにとりあえず呼吸困難を回避したい」のか、「根治治療を希望する」のかにより、治療を行うかどうかが決定されます。後者のふたつの場合は外科手術が必要になるでしょう。
予防としては肥満の子に多い傾向にあるので、持続的な体重のコントロールが非常に大切です。また、アトピー体質による気道過敏、あるいは咳をしやすいために呼吸困難になっている場合には、合わせて塵や埃の除去、喫煙者の禁煙など環境を清浄化すると発作の回数を減らすことが可能です。
ポメラニアンのかかりやすい病気のまとめ
ポメラニアンには一般的に小型犬にかかりやすい病気が多く、特に気管虚脱にわずらっている子はとても多い印象があります。
この病気は完全に予防することは難しいですが、発生する可能性を少しでも少なくしたり、悪化を抑えたりすることはある程度できると思います。また、手術が必要になったり、時には重篤な状態になったりすることもある病気なので、もし、ポメラニアンを飼育されている場合でもそうでなくても、皆さんの愛犬がかかららないように十分注意しましょう。
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