チワワの病気に対する傾向
チワワは世界で最も小さい純血種です。小さいほど良いとされ品種改良されてきました。小さな体、丸みのある頭、クリクリした目はとてもかわいいですが、残念ながらその特徴ゆえになりやすい病気があります。
本稿では、チワワのかかりやすい病気の中でも特にかかりやすく、注意してもらいたいものを取り上げて解説します。
チワワのかかりやすい病気の概要と症状
水頭症
水頭症は、脳脊髄液がたまりすぎてしまうことが原因でさまざまな神経症状を起こす病気です。脳脊髄液は脳の中で作られて循環していますが、作りすぎたり、どこかで詰まってしまったり、吸収されなくなったりすることでたまりすぎてしまいます。
水頭症は、奇形のように先天性に起こることもあれば、腫瘍や炎症などが原因で後天性に起こることもありますが、チワワは先天性の水頭症が多い犬種です。
水頭症の犬は、ドーム状の頭蓋骨・斜視・泉門開存(頭蓋骨の隙間が開いている)・発育の遅れなど、特徴的な外見をしています。多くの場合、症状は、生まれたばかりのころはわかりにくく、成長するにつれて徐々に神経症状が出てきます。最初は、兄弟犬と比べてしつけを覚えられない、ぼんやりしている、怒りっぽいなどの印象を受けるかもしれません。また、ぐるぐる回ったり、うろうろ歩き回ったりという行動の異常が見られてあり、てんかん発作が出ることもあります。
膝蓋骨脱臼
後ろ足の膝関節には膝蓋骨という小さな骨があります。膝蓋骨は大腿骨(太ももの骨)の端にある溝に収まっているのですが、そこから外れてしまう状態を「膝蓋骨脱臼」と呼びます。
膝蓋骨脱には、外側に脱臼する場合と内側に脱臼する場合がありますが、チワワにような小型犬では内側が多く、大型犬では外側が多いとされています。原因については完全にわかっているわけではありませんが、先天的に骨格に異常があり脱臼しているケースや、成長とともに脱臼していくケース、けがや事故のような衝撃で脱臼してしまうケースがあります。
それら中でチワワに圧倒的に多いのは、成長とともに脱臼していくケースです。成長期には大腿骨の溝がしっかりできておらず、この時期にフローリングなど滑るような所で遊んでいると、膝蓋骨が簡単にずれてしまいます。そして、そのような生活を続けていると、脱臼が習慣化してしまいます。
脱臼の程度によって4段階のグレードに分けられ、症状はグレードや経過によって異なります。軽度だと、脱臼した時にケンケンするような歩き方が見られ、重度になると膝を曲げながら歩いたり、足を挙げっぱなしになったりすることがあります。また、後天的に突然脱臼してしまった時は痛みが出ることもあります。
角膜潰瘍
角膜は目の表面の組織です。チワワは目が大きく、少し飛び出ているために、ぶつけたりこすったりといった外傷が原因で、角膜表面の一部が欠けてしまう「角膜潰瘍」になることがあります。
角膜には知覚神経が多く集まっており、潰瘍ができると強い痛みを感じます。それにより目をシバシバしたり、開きにくくなったり、しきりに目をこするような症状が見られます。潰瘍は、かなりひどい状態にならないと見た目ではわからないことがあるため、動物病院では染色検査を行って潰瘍の有無を確認します。
僧帽弁閉鎖不全症
心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。犬の心臓も人間と同じで左右の心房・心室という4つの部屋からできていて、左心房と左心室の間にある弁を僧帽弁と呼びます。
「僧帽弁閉鎖不全症」では、僧帽弁に異常が生じて弁の間に隙間ができた結果、血液の逆流が起こります。僧帽弁閉鎖不全症は老齢の小型犬で最もよく見られる心臓病であり、チワワでも同様です。
初期症状はまったくなく、進行してくると咳が出るようになります。また、呼吸が速くなったり、動きたがらなくなるなどの症状も見られます。
チワワのかかりやすい病気の治療と予防
水頭症の予防と治療
先天性の水頭症は残念ながら予防ができません。
治療には内科治療と外科治療があります。最初に水頭症と診断された場合や症状が軽度だった場合、さまざまな理由で外科治療ができない場合には内科治療を選択します。一般的にはステロイドを使用します。
水頭症によって、てんかん発作が出てしまったら、抗てんかん薬を使用します。内科治療をしても効果が見られない場合、あるいは飼い主さんが根本的な治療を希望された場合は外科治療を選択します。
頭に管を設置して、たまりすぎた脳脊髄液をお腹の中に流すというものです。ただし、費用面の問題や合併症のリスク、治療に対する反応に個体差が大きいなど、施術の判断が難しい治療になります。
膝蓋骨脱臼の予防と治療
先天的な膝蓋骨脱臼の場合は予防法がありませんが、チワワでは成長とともに脱臼していくケースが多いため、フローリングのような滑りやすい所では遊ばせないことが大事です。
滑りにくいマットなどを敷いてあげて、そこで遊ばせる、散歩やドッグランで運動をさせて家では静かに過ごさせるなどの生活習慣を作ってあげるのがお勧めです。
また、ベッドやソファ、階段から落下して脱臼することもあるため、チワワに段差のあるジャンプをできるだけさせないように気をつけましょう。
膝蓋骨脱臼の治療には内科治療と外科治療があります。膝に負担がかからないように、太っていればダイエットをしたり、生活環境を見直したりします。また、脱臼による関節炎を予防するために、関節用サプリメントを投与することもあります。
先天性の場合や脱臼によって痛みが出たり歩きにくくなるようであれば、外科手術が推奨されます。
角膜潰瘍の予防と治療
一般的な角膜潰瘍であれば、点眼薬にて治療します。
まず、潰瘍に感染が加わると重症化するため、感染の有無に関わらず抗菌剤の点眼薬を使用します。そして、角膜保護のためヒアルロン酸ナトリウム点眼薬を使用します。これに加えて、状態によっては内服薬などを使用することもあります。目をこすってしまうと潰瘍が重症化するため、エリザベスカラーを装着します。
僧帽弁閉鎖不全症の予防と治療
確実な予防法はありませんが、早期に発見して定期的に経過を観察することが重要です。症状が出てきた時には病気が進行していると思われますので、チワワがある程度の年齢になったら健康診断を受けるようにしましょう。
治療には内科治療と外科治療があります。症状がなくても心臓の肥大が見られたら内科治療を始めます。病気の状態に合わせて、いくつかの薬を併用することもあります。また、心臓に負担をかけないように、激しい運動は避けましょう。なお、外科治療は僧帽弁を修復する手術で、成功すると完治が見込めます。
チワワのかかりやすい病気のまとめ
かかりやすい病気を知っておくことは、早期発見につながります。また、初期には見た目だけではわからない病気の知識があると、定期的に動物病院を受診しようという気持ちにもなります。正しい知識で、チワワの健康をサポートしてあげましょう。
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