ノルウェージャンフォレストキャットのかかりやすい病気の傾向
ノルウェージャンフォレストキャットは大型の長毛種であり、肥満と毛球症には多くの飼い主さんが悩まれているかもしれません。肥満は、糖尿病や肝臓病、関節疾患などを起こすリスクもあります。
このほか、ノルウェージャンフォレストキャット特有の病気としては、グリコーゲン貯蔵病があります。また、いくつかの血統種に共通する病気として、ピルビン酸キナーゼ欠損症、進行性網膜萎縮症がありますが、ノルウェージャンフォレストキャットでも発生が認められています。
今回はノルウェージャンフォレストキャットによく見られる病気のいくつかを解説します。
ノルウェージャンフォレストキャットのかかりやすい病気の概要と症状
グリコーゲン貯蔵病
グリコーゲン貯蔵病は、糖原病と呼ばれることもあります。これは、非常にまれな病気で、グリコーゲン(糖原)を分解できなくなってしまい、体内に蓄積されることで発症します。
通常、食事として摂取された食べ物は、体内に入ると糖になって体の細胞でエネルギーとして使われます。その際に使いきれない糖は、グリコーゲンという形で肝臓や筋肉に蓄えられます。つまり、グリコーゲン貯蔵病になると貯蔵されている肝臓や筋肉に障害が起きます。通常は空腹状態になるとグリコーゲンを糖として利用するのですが、それができなくなるため低血糖になってしまいます。
グリコーゲン貯蔵病は遺伝子の欠損部位によっていくつかのタイプに分類されますが、ノルウェージャンフォレストキャットを始め、猫はほとんどがⅣ型で、遺伝的にグリコーゲンを分解する酵素がきちんと働けないタイプだと考えられています。
症状は肝臓の腫大、低血糖によるけいれん発作が見られます。さらに、横紋筋融解症という合併症を発症することがあります。横紋筋融解症になると、ミオグロビン尿という赤褐色の尿が出たり、だるさやしびれ、痛みが出ます。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
ピルビン酸キナーゼという酵素が不足することによって赤血球が破壊され、貧血が起こる病気です。生後2~3か月齢で貧血を発症するケースが多いようです。
症状は貧血に関連したもので、疲れやすい、運動したがらない、粘膜が青白くなる、脈が早くなる、などです。検査を行ってわかる症状としては、心雑音、脾腫や肝腫、網状赤血球の増加、高グロブリン血症などがあります。また、軽度のものから重度のもの、断続的に見られるものなど、かなりの個体差があります。こういった違いは、ノルウェージャンフォレストキャットに限った話ではりませんが、生活環境やストレスなどが関与していると考えられています。
進行性網膜萎縮症
複数の呼び名がある病気で、犬では遺伝性網膜変性症、遺伝性網膜症とも呼ばれることがあります。犬と違って(犬ではほとんどが遺伝性)、猫(ノルウェージャンフォレストキャットを含む)では多くが後天的に発症します。
進行性網膜萎縮症とは、眼球の内側を覆っている網膜が変性を起こして薄くなってしまう病気で、視力の低下が起こります。その度合いは、網膜がどの程度萎縮しているのかで異なり、軽度だと夜盲症(暗いところで見えづらくなる)になり、重度だと失明します。
眼瞼内反症
眼瞼(まぶた)が内側に反転してしまった状態で、先天性、発達性(成長に伴って認められる)、続発性に分けられます。
先天性と発達性は、生後4~7か月齢の成長期に発症します。続発性は、慢性の角膜炎や結膜炎などに続いて発症することが多いようです。
角膜が皮膚や毛に刺激されることで、涙が多い、目やにが出る、目をシバシバする、などの症状が認められます。慢性刺激による角膜炎が起こることもあります。
ノルウェージャンフォレストキャットのかかりやすい病気の予防と治療について
グリコーゲン貯蔵病の予防と治療
ノルウェージャンフォレストキャットに発症する先天性の疾患であり、予防法はありません。また、治療法も確立されておらず、対症療法と食事療法が主体になります。治療の目的は、血糖値の変動を緩やかにして低血糖を予防することです。
ピルビン酸キナーゼ欠損症の予防と治療
こちらも遺伝性なので予防法はありません。対策は症状によって変わります。
症状が軽度な場合は、激しい運動を避けるなどの静かな生活をしていれば、QOL(quality of life:生活、一生の質)を十分維持することが可能です。
症状が重度な場合も安静が大事になりますが、貧血がひどい場合は輸血や骨髄移植を考慮します。しかしながら、コストや副作用の観点から、なかなか実施は難しい治療法です。また、ストレスが関与している可能性があるため、ストレスを減らすということもある程度の効果が期待できます。
進行性網膜萎縮症の予防と治療
ノルウェージャンフォレストキャットに発症する先天的タイプは、残念ながら予防法がありません。後天的に発症するタイプは、タウリンというアミノ酸の不足が原因であることがわかっています。そのため、予防法はタウリンを摂取することです。
今のキャットフードにはタウリンが含まれているので、キャットフードを食べている猫ではほとんどこの病気は見られません。しかし、一度変性してしまった網膜を修復することはできないため、治療法はありません。そのため、予防が非常に重要になります。
眼瞼内反症
内反している部分によって治療法は変わりますが、一般的には内反した眼瞼を外反させる外科手術が必要になります。成長期に発症した場合には、糸で眼瞼を引っ張るという方法がありますが、あくまで一時的な方法であり、将来的には手術が必要になります。
まとめ
ノルウェージャンフォレストキャットもほかの猫種と同様、いくつかの遺伝的な病気を発症してしまうリスクがあります。
なかには、ノルウェージャンフォレストキャット特有の病気もあります。こういった遺伝病を避けるためには、遺伝子検査が必要になります。しかし、遺伝子検査ができる病気とできない病気があるため、ノルウェージャンフォレストキャットを飼おうと思ったら、獣医さんに相談してみてはいかがでしょうか。
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