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アビシニアンのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】

アビシニアンの病気に対する傾向

アビシニアンは食欲旺盛な子が多く、食べ過ぎてしまい肥満になることがあります。その結果、糖尿病や肝臓病、関節疾患といった肥満に関連した病気を発症することもあります。

また、遺伝的な要因で発生がみられる病気や先天的な病気がいくつかあります。遺伝的・先天的な病気は、予防することや完治させることが難しいものが多く、発症してしまったら症状を軽くすることくらいしかできることがないというケースもあります。

アビシニアンでは、進行性網膜萎縮症、アミロイドーシス、ピルビン酸キナーゼ欠損症、後天性重症筋無力症などが知られています。今回はこれらの遺伝的・先天的な病気について取り上げます。

アビシニアンのかかりやすい病気の概要と症状

アビシニアンのかかりやすい病気の概要と症状

アビシニアンに先天的に発症する進行性網膜萎縮症

遺伝性網膜変性症、遺伝性網膜症とも呼ばれることがあります。犬では、ほとんどが遺伝性の病気であるのに対し、猫では多くが後天性です。ただし、アビシニアンでは先天的に発症することがあります。

眼球の内側を覆っている網膜が変性を起こして薄くなってしまう病気で、視力障害が起こります。その度合いは網膜がどの程度萎縮しているのかにより、軽度だと夜盲症(暗いところで見えづらくなる)、重度だと失明します。

アビシニアンでは1歳未満で発症することがあるアミロイドーシス

アミロイドと呼ばれるナイロンのような細長いタンパク質が、体の中のさまざまな臓器に沈着してしまう病気です。

アミロイドが沈着した臓器は機能障害を起こします。7歳ごろが好発年齢とされていますが、アビシニアンでは1歳未満で発症することがあります。アミロイドにはいくつかの種類があり、中でもアミロイドーシスを起こすのは「血清アミロイドAタンパク(SAA)」というものです。これは本来は体内で炎症が起こった時に肝臓で産生されるタンパクであり、有害なものではありません。しかし、このタンパク質の産生量があまりにも多かったり、遺伝的にアミロイドが沈着しやすい体質だったりすると、アミロイドーシスになってしまいます。

アミロイドーシスの症状は、どの臓器に沈着したかによって異なりますが、主に肝臓と腎臓に沈着した時に症状が出ます。主な症状は元気や食欲がなくなる、多飲多尿、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、肝不全、タンパク尿、血栓塞栓症などがあります。

アビシニアンがかかりやすい進行性網膜萎縮症、アミロイドーシス

ピルビン酸キナーゼ欠損症

その名のとおり、ピルビン酸キナーゼという酵素が欠損することで赤血球が破壊されて貧血を引き起こします。

症状は貧血を伴うもので、疲れやすい、運動したがらない、粘膜が青白くなる、脈が早くなる、などが見られます。さらに細かく見ていくと、心雑音、脾腫や肝腫、網状赤血球の増加、高グロブリン血症などがあります。

症状は軽度のものから重度のもの、断続的に見られるものがあり、6か月齢くらいの若齢から発症するものや5歳くらいの成猫で発症するものなど、かなり個体差があります。こういった違いは、生活環境やストレスなどが関与していると考えられています。

後天性重症筋無力症

神経と筋肉の接合部に異常が起こってしまい、筋肉をきちんと動かせなくなる病気です。体を動かそうとする時には末梢神経から筋肉へ、アセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。筋肉にはアセチルコリンを受け取る受容体がありますが、この受容体を攻撃してしまう自己抗体ができてしまい、発症します。

この自己抗体は、特発性の自己免疫疾患や、胸腺腫など一部の腫瘍が原因で作られると考えられています。筋力が低下する、食べるスピードが遅くなる、まぶたが落ちたような顔つきになる、歩き方がフラフラするなどの症状が見られます。また、食道の筋肉が虚脱してしまい巨大食道症を発症することがあります。巨大食道症になると、食べ物が胃に流れにくくなり、吐き戻すようになります。

アビシニアンのかかりやすい病気の予防と治療

アビシニアンのかかりやすい病気の予防と治療

進行性網膜萎縮症の予防と治療

アビシニアンで先天的に発症するものは予防法がありません。後天性ではタウリンというアミノ酸の不足が原因となっていることがわかっています。そのため、タウリンを摂取することが予防になります。現在ではキャットフードにタウリンが含まれているので、キャットフードを食べている猫ではほとんどこの病気は見られません。
なお、一度変性してしまった網膜を修復することはできないため、治療法はありません。

アミロイドーシスの予防と治療

確立された予防法、治療法はありません。発症してしまったら、それぞれの症状に対して対症療法を行います。

ピルビン酸キナーゼ欠損症の予防と治療

確実な予防法や治療法はありません。症状が軽度であれば、激しい運動を避けるなど落ち着いた生活をしていれば十分にQOL(quality of life:生活、一生の質)を維持できるケースもあります。

重度の場合も安静が大事になりますが、貧血が重度であれば輸血や骨髄移植を考慮します。また、ストレスを減らすということもある程度の効果があるかもしれません。

後天性重症筋無力症の予防と治療

残念ながら、予防法はありません。治療法は、アセチルコリン分解酵素を抑える作用のあるコリンエステラーゼ阻害薬を投与して、神経と筋肉の伝達を促す方法、ステロイドのような免疫抑制剤で自己抗体の働きを抑える方法があります。腫瘍に伴って重症筋無力症が発症している場合は、腫瘍の治療を行います。

アビシニアンのかかりやすい病気のまとめ

筋肉質で足が長いスマートな体型、きれいな楕円形の目、深みのある繊細な毛色が魅力のアビシニアンですが、ほかの猫種と同様、いくつかの遺伝的な病気を発症してしまうリスクがあります。

遺伝病は、その遺伝子を持っていると確実に予防することは難しく、発症してしまうと完治できないものが多いのです。病気の中には、遺伝子検査を行うことで、リスクを避けることができるものがあります。そのため、そういった病気が心配な方は、アビシニアンを飼う前に獣医さんに相談してはいかがでしょうか。

※本稿『アビシニアンのかかりやすい病気の予防と治療について』は、獣医師により執筆されています。

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