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アメリカンカールのかかりやすい病気とその予防、治療方法【獣医師が執筆】
- 2019年12月11日
- 猫の種類
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アメリカンカールの病気の特徴
アメリカンカールは品種に特徴的な病気が少ないのですが、特徴的な耳の形から、外耳炎には注意が必要です。また、長毛タイプもいるため、毛球症も多く見られます。ほかにも栄養的な問題で起こる進行性網膜萎縮症、猫に多い下部尿路疾患などは、アメリカンカールと暮らしていくうえで知っておきたい病気です。
病気の概要、症状
進行性網膜萎縮症
遺伝性網膜変性症、遺伝性網膜症と呼ばれることもあります。犬ではほとんどが遺伝性に発症しますが、猫では多くの場合、後天的に発症します。
進行性網膜萎縮症は、眼球の内側を覆っている網膜という場所が変性を起こして薄くなってしまう病気で、症状としては視力の低下が認められます。どの程度の視力低下が起こるかは網膜の萎縮の程度によります。軽症の場合は、暗いところで見えづらくなる夜盲症になり、重度になると失明します。
下部尿路疾患
尿路は、腎臓から尿管までの上部尿路と膀胱から尿道までの下部尿路に分けられます。このうち、下部尿路の機能障害や疾患を総称して下部尿路疾患と呼び、尿道感染症や腎臓結石などの原因が該当しないケースで診断されます。
この病気は膀胱内の結晶、または結石、膀胱炎、尿道閉塞などが原因で発症します。猫は下部尿路疾患の発生率が非常に高く、アメリカンカールも例外ではありません。症状は、尿が出にくくなり頻尿になる、排尿時に痛みが出る、血尿、陰部をしきりに舐める、トイレ以外で排尿する、といったものです。
外耳炎
アメリカンカールはその名のとおり耳がカールしていますが、その特徴のせいで耳垢がたまりやすいという特徴があります。そして外耳炎の発生リスクを高める要因になります。
症状は、耳の入口から鼓膜までの外耳に赤みや痒みが見られます。重度になると痛みを伴うことがあります。外耳炎は犬では非常にポピュラーな病気ですが、猫では珍しいとされています。しかしながら、スコティッシュ・フォールドやアメリカンカールといった耳の形に特徴がある品種では注意が必要です。
毛球症
アメリカンカールの中でも長毛の子で注意が必要なのが毛球症です。猫は頻繁に毛づくろいをします。これは清潔のため、気持ちを落ち着けるためといった目的がありますが、このときに抜けた毛を飲み込んでしまうのです。
通常であれば飲み込んだ毛は排泄されますが、正常に排泄できないと、毛は消化されないため体内で徐々に塊になってしまいます。そのため、長毛だったり毛づくろいの頻度が高くなったりすると毛球症のリスクが高くなります。毛球症になると、毛球で胃が刺激されたり、腸に流れて途中で詰まったりすると、頻繁な吐き気などの症状が見られるようになります。
予防、治療
進行性網膜萎縮症
遺伝性に発症するものは予防できませんが、猫の場合は、多くが後天性の発症であり、予防可能です。
後天的に発症するタイプはタウリンというアミノ酸が不足することが原因だということがわかっています。そのため、タウリンを摂取することが予防になります。現在のキャットフードにはタウリンが含まれているため、キャットフードを与えていれば、わざわざタウリンを添加する必要はありません。
なお、網膜は、一度変性してしまうとそれを修復することができないため、治療法はありません。そのため、予防に気をつけましょう。
下部尿路疾患
水分をしっかり摂って排尿を促すこと、そしてなるべくストレスがかからない環境を作ってあげることが、予防にもなり治療にもなります。下部尿路疾患の中には、それだけで治癒するものもありますが、再発率が高いためしっかりとしたケアが必要です。
猫では尿路感染症が起こることは比較的少なく、主にストレスが原因となる特発性膀胱炎、結石や結晶が原因になる膀胱炎が多いのが特徴です。結石の種類は、ストラバイト、シュウ酸カルシウムが多く、ストラバイトは溶解可能ですが、シュウ酸カルシウムは溶解しません。そのため、療法食や薬を使っての治療が一般的です。
外耳炎
こまめに耳の汚れや赤みがないかどうか、かゆがっていないかをチェックしましょう。汚れがあったら、コットンのようなやわらかいものでやさしく拭き取ってあげてください。綿棒は耳を傷つけたり、汚れを奥に押し込んでしまうことがあるため、使わないほうがいいでしょう。
炎症を抑えるためには薬が必要になるため、赤みとかゆみがあった場合は動物病院を受診してください。薬は外用薬を使うことが多いですが、場合によっては内服薬が処方されることもあります。
毛球症
毛球症の症状は、換毛期に出やすいため、その時期に毛球除去剤を使用したり、毛球症になりにくいキャットフードを与えることがあります。また、こまめにブラッシングをすることで飲み込んでしまう毛の量を減らすことが予防になります。
重度の毛球症になってしまうと、内視鏡で毛球を摘出したり、開腹して胃切開や腸切開による摘出を行うことがあるので注意してください。
まとめ
今回取り上げた病気は、日ごろのケアで予防することが可能であり、早期発見によってしっかり治療することができるものばかりです。反面、発見が遅れると失明のような取り返しのつかない状態になってしまったり、辛い思いをさせてしまったりすることになります。
病気についての知識があれば、予防も早期発見も可能になります。ご家族で猫の健康を維持できるように適切なケアをしてあげましょう。
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