
今回は株式会社クリエイティブヨーコ 代表取締役社長 北原武幸様を取材させて頂きます。北原社長、本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、どのようなペット事業を行っているのでしょうか?
ペット事業の内容
我々はSPA企業(製造小売業)のため、製造のみ委託しておりますが、ペット商品の製造企画から販売まで一貫して行っております。規模感としましては『ペットパラダイス』という名前がついている店舗は国内で71店舗、海外で2店舗(台湾・香港)、ECが国内で7店舗、海外で2店舗(中国・台湾)の展開となっております。その他にも2024年からトリミングサロンをスタートしており、預かりとホテルも含めますと現在サービスに関わる店舗は4店舗の展開です。ペット商品のカテゴリーとしましてはペットのアパレル・雑貨・ペットフード・ペットケアの4つです。ブランドとしましては『ペットパラダイス』という我々のオリジナルのブランドと、ライセンシーという立場でキャラクターの権利のご提供を受けてオリジナルのペット商品を企画しております。キャラクターはディズニーやスヌーピーなどで、その他にもLeeなどのアパレルブランドの商品も展開しています。
— ペット商品のカテゴリーの内訳はやはりアパレルが多いのでしょうか?
実は最近は雑貨の方が人気がありまして、内訳は雑貨45%・アパレル40%です。昔はアパレルが主力でしたが、カテゴリーを広げて雑貨のアイテムを増やした要因もあります。最近は猛暑の影響もあり夏は衣類を着せる需要も少ないですし、その代わり犬具やハーネスでかわいさを演出したり、おしゃれができるペット雑貨の方が伸びていますね。
— 御社は小型犬がメインのイメージがありますが、そこは何か戦略などがあるのでしょうか?
売れるものにフォーカスしてきた結果として小型犬の商品が多くなりました。ただ、最近はインバウンドの比率が非常に上がり大型犬を飼っている海外のお客様が増えてきたため、お店の現場からも「大型犬のバリエーションも欲しい」との声も増えてきました。そこは応えていかないといけないと思い徐々に修正をかけているところです。確かにおっしゃる通り弊社は“小型犬のお店”という印象が強いと思いますが、そこもマーケティング・PRに力をいれて払拭していきたいですね。
— 御社の商品は突出しておもしろい商品が多いところかと思います。例えばわんちゃんに着せる恐竜のお洋服でしたりとか。そういった商品を生み出せる要因はどのようなものでしょうか。
実は恐竜などの服をペットに着せる「なりきり」を日本で初めてやり始めたのは私だと思うのですが(笑)。今はミツバチになりきる商品などを他社でも見かけますが、企画当時はSNSなどもなく…。アイデアのキッカケは人間の赤ちゃんに着せるお洋服でテントウムシになりきるものがあり「パンツに羽がついていてかわいいな…」と思った事です。おそらく他社の企画の方達は市場の動向も見て企画されると思うのですが、弊社は「かわいい」「ユニーク」「癒される」などの感情を会社全体で大事にするカラーがあります。かわいいお洋服を着ているペットを見て飼い主が笑っていて、そんな飼い主を見ているペットも「すごい嬉しそう…。僕も幸せだな」と感じてもらえると最高ですね。

— それは最高のシーンですね…。ちなみにディズニー様とはどういう経緯でライセンシーのご契約を結ばれたのですか?
こちらは創業者の伊藤洋子さんが開拓をしたという経緯があります。当時ディズニー様もペット業界は未開拓との事で2003年からキャラクターの権利をお借りして展開させて頂いております。ディズニーのペット商品を展開したことで一気に注目され、そこから様々なライセンサーからお声がけをいただきキャラクター商品が増えていきました。
社長になるまでの経緯
私は1996年にクリエイティブヨーコに新卒で入社しました。まず始めは新卒はみんなお店に配属されますので、ショップ勤務をしておりました。入社後2年くらいは店長やスーパーバイザーとしてショップの指導しておりましたが、そのあとは企画一筋でやってきております。2022年から企画の部長になりましたが、2年後の2024年に社長に就任したという経緯です。
— 企画に行かれた経緯や、企画部長から社長への就任が非常に早いのはどのような経緯があったのでしょうか?
これはお恥ずかしい話なのですが…(笑)。企画になった経緯としましては、社内結婚した妻が当時社長だった伊藤洋子さんに「北原さんが企画に向いている」と進言したところ「じゃあやってみよう」というのが経緯です(笑)。
宮島様(マーケティング販売促進課 課長):北原が社長へ就任した経緯に関しましては、私の方からお伝えさせて頂きます。弊社は営業部門もありますがモノ作りの会社ですので企画部が会社の主体ではあります。北原はその企画のたたき上げといいますか、企画部を大きくしてきたリーダーでしたのでそのまま企画部長、次期社長というところでは1番の候補であったという経緯です。
— 奥様と当時の社長の人を見る目にも驚きですし、北原社長が約30年間にもわたり企画部一筋でかつご実績も出されて働かれているのはそう簡単にできる事ではないですよね…。
失礼ですが転職しようとは思わなかったのでしょうか?
弊社はやりがいのあるすごくいい会社だなと思います。やりたいことができる。今もそれは風土としてありますし、チャレンジさせてくれる会社です。モノづくりに関しても発想したことをスピーディーにカタチにできる会社ですし、問題点を改善するような小さなことでもアイデアをもってして改善していけましたので、そこはすごく魅力がありました。挫折もいっぱいありましたけど、チャレンジできる環境が魅力でずっと続けてこられたかなと思います。
— 北原社長がご実績を出されてきたコツや意識されていた事は何でしょうか?
実はあまりなくて、自分としては好きなことやってきただけなんですよね…。ただ、人と同じことはしたくなかったのでチャレンジはしてきました。
人生を変えた経験
先ほどの妻の話もそうですが、もう1つはオーナー会社から2008年にM&Aで株式会社オンワードホールディングスの一員になった事です。大きな組織にはいり、環境も考え方も変えざるをえなかった経験は現在の社長業を担う上で非常に活きております。それまではオーナー会社でしたので、やりたいことを直接オーナーにお願いしてその場で「いいよ」と許可を頂いたり、発注数や金額も印鑑一つで進めていたりしておりました。在庫の管理も予算も全くなく、好きなことをやって積み上げていきその結果が売り上げになっていくようなイメージです。実際にはあったとは思いますけどね…。そのような状態から、2008年になって数字や予算により強くなる必要があり、かつ仕組みも変えないといけなくなり非常に勉強になりました。業務内容や理念は変わっておりませんが、オーナー会社とホールディングスの会社の両者を経験できた事は今の社長業に非常に活きております。
経営者として大事にしているポイント
会社のみんなが働きやすい環境づくりです。これは社長になってからすごく感じていることです。もちろん社長になる前も自分の頑張りや発想力で会社を動かしてきた感覚は少なからずありましたが、一番上に立ってみると「みんなが働く環境を大事にしないといけないな…」と強く実感しました。みんなが自由な発想をできてそれをカタチにするために動ける環境づくりや、成長できる職場になるための整備を大事にしています。具体的には10年先を見据えて会社を成長させるための教育研修の充実などです。もちろん個々人が主体的に成長していくことも大事ですが、会社から与えられるものもあると思っています。そのため、新卒の研修だけでなく、3年後5年後のフォローアップ研修やマネジメントの教育などにもとりかかっています。
— ちなみに長野が本社という事で、ここでみなさん働かれているんですか?
東京のオフィスと長野の本社で役割を分けております。東京はマーケティング・営業・店舗開発・BtoBなどの事業部をおいて、長野には企画・バックオフィスの事業部を置いているという区分にしています。
— では長野にいる方は全員長野ご出身の方なんですか?
それがそうではないなんですよ(笑)。ありがたいことに全国津々浦々からご応募を頂いておりまして…。
— なんと!皆様引っ越してこられるんですか?
はい。これはカンパニーのブランド力かなと思います。社員寮や住宅手当もありますし、取り扱っているものによるところが大きいのもありますね。やはり当社のオリジナルキャラクターである『しろたん』人気は強いです。「しろたんにちっちゃいころから癒されていました」「おばあちゃんに買ってもらって以来ずっともっています!」という方が、ことデザイナー・企画への新卒の応募者数に関して言えばすさまじいです。『しろたん』は昨年25周年を迎えました。ちょうど今の新卒のみなさんが一番よく知っている世代なので、ここ数年は本当に顕著ですね。みなさん「しろたんに関わりたい!」と(笑)。その他にも最近は食品や動物関係の専攻の方の応募も非常に増えてきております。

一緒に働きたい人材
一言でいうと心が美しい方です。素直で人の心を思いやれる方ですかね。会社も1つにならないと大きくなりませんし、人と関わりながら仕事をしているので、自分だけでは成り立ちませんから。そのあたりがわかるような人材と一緒に働いていきたいですね。
— 社長が最終面接をされると思いますが、どのへんを見られますか?
素直かどうかや、聞いた質問にちゃんと答えられるかどうかです。Aについて聞いたらAについて答えられる方。あとはうちの会社のことが好きな方です。インターンシップなんかも人事部が企画してワークショップを開催したり、実際に社員が働いているところを見て頂いたりするのですが、参加してくれた学生さんはほぼ面接に来てくれたり、そういったことを通して弊社に惚れ込んでくれたりしていますね。
— 新卒では何名くらい採用されるんですか?
今年は13名でした。今回は新たにトリミングのサービスも始めたのでトリミングの新卒と、ペット服のパタンナーなども新卒で採用いたしました。弊社にはパタンナー専用の部屋もありますので。
— 本当に自社完結の風土が強いんですね!
そうですね。冒頭にお伝えした製造や一部のマーケティングなどは外部依頼しておりますが、それ以外はできる限り自前主義で取り組むことが元々の創業者のやり方でした。そこ(長野本社の隣)にもスタジオがありますけどホームページの写真はそこでとっていますし、モデルの犬は社員や近所のペットであることも珍しくないです。商品の試着も兼ねている部分もありますが(笑)。過去には店舗設計も自分たちで行っておりました。当時はCADをひける専用の社員がいたくらいですからね(笑)。あとはシステムもほぼ自前です。各店舗の売上の集計やPOSデータも全部自社のシステムで管理しておりまして、そのPOSデータも商品1つ1つに画像が入っておりPOSデータがカタログみたいに見られるようになっています。ただしこのシステムは1997年頃から使っていますので、そろそろリプレイスしないとまずいですね(笑)。当時はものすごく先進的な事をやっていたのですが、店舗数も増えてきましたし、他社のシステムともほぼ合わず、分析も色々できなかったりするので、そろそろ何とかしないといけないですね。
— どんどんアイデアをカタチにしていく推進力のようなものが企業のカラーとして非常に強いことがとてもわかりました。そんな御社の今後のペット事業の展望はいかがでしょうか?
ペット事業の展望
ペットに関しては色んな可能性があるなと思っています。今まで商品作りのキャリア一筋でしたのでそっちにばかり目がいっていましたが、トリミングなどの事業もスタートしましたし。これはまだ事業として具体的に固めていないのですが、わんちゃんを飼って一緒に生活している時間そのものがなにものにも変えられないじゃないですか?その貴重な思い出になる楽しい時間を何か事業化したいと考えています。それはモノなのかコトなのかはまだ具体化していないのですが。
海外展開も拡大していきます。国内は消費が落ちてよほどこだわった商品でないとお財布の口が緩まない状況が続いております。一方でインバウンド需要が我々の業務の中でかなりの比率を占めてきています。今は海外から来ている観光客にサービスを提供しているような待ちの状態ですが、今後は攻めの姿勢で海外に出店して現地で弊社のサービスを提供していきたいと考えています。冒頭でお伝えした海外のFC展開がまさにそれにあたるのですが。内装も品揃えも接客サービスも日本と同じレベルのサービスを提供して海外に出ていきたいと思っています。
— きっと海外のお客様も喜んでくれますね!あとはリブランディングもされていくとお聞きしましたが?
はい。新たに2024年11月に「ペットと人間の、新しいカンケイ」というブランドパーパスを立てました。これは今後ペットパラダイスを運営していく上で「ペットに寄りそうブランドでありたい」という事を主軸に置きながらものづくり・接客・あらゆる表現などをやっていきましょうとスタートしております。今まではものづくりの会社で、マーケティングはほとんど取り入れずにできたものをそのまま届ける事をやってきました。しかしここまでブランドが成長してきましたので、今回新たにペットパラダイスというものを見直し、ブランドパーパスに沿ってお客様に認知していただく活動を仕切り直しで始めております。具体的にはブランドパートナーに倉木麻衣さんをお招きしてトークショーを開催したり、「#ペットと人と」プロジェクトでお客様参加型のキャンペーンや、もっとブランドを知っていただくイベントを開催する予定です。

— もしかしてこれは御社で開催する初のイベントですか?
初です!プロダクトアウトでここまで来た会社ですが、最近は他社さんもディズニーのペット商品をだしていたり差別化が難しくなってきているので、芯を通したパーパスを広めていき「ペットパラダイスってこんなブランドなんだ」と思ってもらえるようにしていく。パーパスの浸透は商品などのモノだけでは足りないので、コトも含めてやっていきたいなと思っています。海外もその先にあると思うので、まずは足元を固めていくためにリブランディングをスタートしました。
— これまでも御社は十分ペットに寄り添ってこられたかと思いますが、さらに進化されるのですね!ちなみに社長はペットは飼われているんですか?
実は来週あたりにシーズーを迎える予定なんです(笑)。うちも子供が3人いて上の子がやっと就職したので飼いたいと思っておりましたし「ペットを飼っている人の気持ちに対して何ができるかな」というところをさらに深掘りできるかと思います。本当は娘が「シーズーがぶさかわいくて好き」とずっと言っていたので飼うという経緯もあるのですが(笑)。
— 娘様、喜んでくれるといいですね!もう少しお話をお伺いしたかったのですがそろそろお時間となりました…。北原社長がおっしゃっていた「かわいいお洋服を着ているペットを見て飼い主が笑っていて、そんな飼い主を見ているペットも幸せな気持ちになってくれると最高」という言葉がとても胸に刺さりました。今後も一人のファンとして御社の商品を楽しみにしております!本日はありがとうございました。
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